2022年04月26日 14:30 〜 16:00 オンライン開催
「沖縄復帰50年」(5) ピーター・グルース沖縄科学技術大学院大学(OIST)学長

会見メモ

沖縄科学技術大学院大学(OIST)は沖縄の振興と自立的発展、世界の科学技術の発展に寄与することを目的に設立された。2012年9月の開校から今年で10年を迎える。

2017年から学長を務めるピーター・グルースさんが、日本の科学分野における研究の現状と課題、今後50年を見据えOISTが沖縄の振興に果たす役割などについて話した。

 

司会 早川由紀美 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)

代表質問 元村有希子 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)

通訳 大野理恵(サイマル・インターナショナル)

 


会見リポート

開校から10年、魅力的な研究環境で躍進

船越 翔 (読売新聞社科学部)

 世界最高水準の研究拠点をつくり、沖縄の振興を図る――。そんな壮大な目標を掲げた沖縄科学技術大学院大学(OIST)が2012年9月に開校してから、10年がたとうとしている。独マックス・プランク学術振興協会会長などを歴任してきたOISTのピーター・グルース学長(72)は「研究と教育の分野で、国際的に極めて高い位置に立つことができた」とこれまでの成果を強調した。

 その証左の一つとなるのが、英科学誌ネイチャーが2019年に公表したランキングだ。自然科学分野で質の高い論文の割合が多い研究機関で、OISTは東京大(40位)や京都大(60位)など有力大学を抑えて国内最高の9位となった。

 グルース学長は躍進の理由について、若手を含めた研究者たちに対して「安定した資金を配分してきた」と説明した。OISTの年間予算約180億円の95%は政府によってまかなわれている。国から国立大学への運営費交付金が減少傾向にある中、多くの研究者が外部資金の確保に追われるのとは対照的に、OISTでは研究に専念できる環境が用意されている。

 公用語は英語で、分野に縛られない自由な研究を促すために学部や学科のような「垣根」は設けない。こうした点に多くの研究者が魅力を感じ、2018年度に教授18人を採用した際には、応募者は1500人を超えた。「我々はベストの中のベストの人材を選ぶことができる」。グルース学長は胸を張る。

 一方で、今後の課題としては、研究で得られた成果や知的財産の実用化を挙げた。OISTは現在、新興企業を支援するための資金調達やインキュベーション施設の活用などを進めている。グルース学長は、沖縄が14~16世紀の琉球王朝時代に海上貿易が盛んだったことを引き合いに出し、「我々は今、知的財産やハイテク産業の交易に傾注していかなければならない」と述べた。その意気込みの通り、沖縄の振興や発展に貢献していけるか。OISTの真価がこれから問われることになる。


ゲスト / Guest

  • ピーター・グルース / Peter Gruss

    沖縄科学技術大学院大学学長 / president, Okinawa Institute of science and technology graduate university

研究テーマ:沖縄復帰50年

研究会回数:5

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