会見リポート
2022年05月09日
13:30 〜 15:00
10階ホール
「ウクライナ」(13) 尾崎久仁子・元国際刑事裁判所(ICC)裁判官
会見メモ
2010年3月から19年11月まで国際刑事裁判所(ICC)の裁判官を務めた尾崎久仁子・中央大学特任教授が、ICCの機構の解説や実例を交えながら、ICCが捜査を開始したウクライナにおけるロシアの戦争犯罪の訴追の展望などついて話した。
司会 大内佐紀 日本記者クラブ企画委員(読売新聞)
会見リポート
戦争犯罪 真実解明に意味
島崎 浩 (NHK国際部副部長)
ウクライナ各地で明らかになった市民への残虐行為をロシアの戦争犯罪として裁くことはできるのか。2019年まで9年間、国際刑事裁判所(ICC)で判事を務めた尾崎久仁子中央大特任教授はICC設立の経緯や機能そしてウクライナでの戦争犯罪解明の展望を詳しく解説した。
ICCが主に対象とするのは▽ジェノサイド(集団殺害)▽人道に対する犯罪▽戦争犯罪▽侵略犯罪のコアクライムと呼ばれる4つの犯罪で、国際法に基づき個人を処罰する。
カーン主任検察官が現地入りするなど捜査に乗り出したICCがロシアの関係者を訴追する可能性について「ジェノサイドの立証は難しいのではないか」とする一方「報道の限りでは、戦争犯罪は確実に該当すると思うし、人道に対する犯罪についても該当する可能性はかなり高い」と指摘した。
では、プーチン氏自身の責任追及はどうなのか。
尾崎さんは「上官責任」という法理を紹介しつつも訴追は容易ではないとの見方を示した。
「指導者とつながる証拠を集めるのはロシアが協力しない中では難しいし、仮に証拠が見つかり逮捕状が出ても身柄の確保は難しい。そしてロシア自体が引き渡さないだろう」
それでも2009年にICCが逮捕状を出したスーダンのバシール前大統領がその後失脚したことを引き合いに「ICCには時効はなく何が起きるかわからない。体制転換はいつでも起こりえる」とプーチン氏の将来の責任追及の可能性を指摘した。ロシア軍の蛮行に対し“法の支配の最後の砦”とも言われるICCが目に見える成果を上げられるのか。尾崎さんは様々な課題を認めつつも「真実を明らかにすることは被害者にとっては大きな意味がある」とICCが関与する意義を強調した。
ゲスト / Guest
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尾崎久仁子 / Kuniko Ozaki
元国際刑事裁判所(ICC)裁判官
研究テーマ:ウクライナ
研究会回数:13