2022年04月21日 13:00 〜 14:30 10階ホール
「ウクライナ」(11) サイバー攻撃 岡本勝之・トレンドマイクロ セキュリティエバンジェリスト

会見メモ

サイバー空間でもロシアとウクライナの攻防が繰り広げられている。

その実態について、サイバーセキュリティに詳しい岡本勝之さん(トレンドマイクロ社)が解説した。

 

司会 播摩卓士 日本記者クラブ企画委員(TBS)

 

 


会見リポート

サイバー戦、露に連携不備

石黒 穣 (読売新聞社能登支局長)

 ロシアによるウクライナ侵攻は、戦車や砲弾、ミサイルによる破壊に加え、サイバー空間でもしつような攻撃が続く。岡本氏も21世紀の戦争の特徴としてサイバー空間が主戦場の一つとなったことに注目する。

 ロシアがウクライナに攻め込んだのは2月24日だが、サイバー空間ではそれ以前から、ロシアによる攻撃が顕著になっていたという。

 ウクライナ政府関係のウェブサイトを遠隔操作でダウンさせたり、ネットワークに侵入して機密情報を盗み取ったりする攻撃が相次いだ。侵攻が始まってからは首都キーウなどの大停電を狙った変電施設への侵入なども試みられたという。これは、ウクライナ側が情報企業の協力を得て撃退した。思い通りに攻撃が成功していたら、戦況を大きく左右していた可能性がある。

 ウクライナ側もロシアの政府機関やインフラ、銀行などへの攻撃で応戦しているそうだ。SNSで有志を募っており、世界各地のハッカーが義勇兵としてはせ参じている。

 専門家の間で、近年最も深刻なサイバー攻撃と考えられているのは2020年、多数の米政府機関や大手企業が標的になった攻撃だ。米国の情報大手のソフトウエアにウイルス「サンバースト」が巧妙に仕掛けられ、そのソフトを利用する組織の間で、機密情報の盗難被害が広がったとされる。ロシア政府が背後にいるとみられている。

 岡本氏は、今回の軍事侵攻に絡み、サンバースト級の攻撃がウクライナに対してまだ仕掛けられていないことが不可解だと述べた。大規模なサイバー攻撃には関係するグループ間で役割分担など入念な調整が必要で、今回は、準備不足で連携が取れていないのではないかとの見方を示した。軍事攻撃では随所で作戦の不備を露呈するロシアが、サイバー攻撃でも弱点があることをうかがわせる。


ゲスト / Guest

  • 岡本勝之 / OKAMOTO Katsuyuki

    トレンドマイクロ株式会社セキュリティエバンジェリスト

研究テーマ:ウクライナ

研究会回数:11

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