2022年05月13日 16:00 〜 17:00 10階ホール
「沖縄復帰50年」(9) 森本敏・元防衛相

会見メモ

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受け、ヨーロッパをはじめとする国際情勢は変化している。

アジア地域はどうなるのか、その中での沖縄の位置づけも含め、日本の安全保障を巡る課題、今後の展望を元防衛相で拓殖大学顧問の森本敏さんが話した。

 

司会 川上高志 日本記者クラブ企画委員(共同通信)


会見リポート

辺野古 軍事より政治的選択

明 真南斗 (琉球新報社東京支社報道グループ)

 元防衛相で拓殖大学顧問の森本敏さんは、沖縄の日本復帰50年に合わせた企画で、米国の同盟国として日本の防衛体制を強化していく重要性を訴えた。ロシアのウクライナ侵攻も踏まえ、アジア地域での安全保障環境が今後どう変化していくかも論じた。日米地位協定の改定に消極的な点など、現在の日本政府と軌を一にする見解を示す場面も多かった。一方で、普天間飛行場の移設問題については自身の経験から独自の見解を示した。

 会見ではまず沖縄戦の激しさに触れ「その犠牲の上に今日の平和がある。いかなる犠牲を払っても、沖縄の人々を守らないといけない」と語った。その上で「ロシアと中国、北朝鮮という三つの国にまともに直面しているのは世界で日本だけだ」と危機感をあらわにした。

 ウクライナ情勢を踏まえ「米国は世界規模で兵力配置を見直しているが、欧州で引き続き不安定な状態が続くので、欧州から兵力を下げるのは難しいだろう」として「インド太平洋地域の戦力を効率的に使えるよう体制を変えると同時に、同盟国に貢献を求める方向に進むのではないか」と分析。特に対中国戦略で日本への期待が大きいと強調した。いわゆる「敵基地攻撃能力」を示す「反撃能力」の保有や防衛費の増額に前向きな議論について「米国は大変、歓迎するだろう」と述べた。

 森本さんは2012年に防衛相を務めた。質疑応答では、普天間飛行場の名護市辺野古移設について「軍事的な必然性があったのではない。政治的に一番どこが望ましいか、実行可能かという基準を上位に置いて選択した結果だ」と語った。軍事的には県外も含めて複数の案があり得たと説明した。「名護市辺野古移設が唯一の解決策」としている現在の政権の説明を相対化する知見を改めて与えた。


ゲスト / Guest

  • 森本敏 / MORIMOTO Satoshi

    元防衛相 / former minister of defense

研究テーマ:沖縄復帰50年

研究会回数:9

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