2022年04月15日 16:30 〜 18:00 10階ホール
「朝鮮半島の安全保障と日本の役割」道下徳成・政策研究大学院大学理事・副学長

会見メモ

北朝鮮の金正恩総書記の祖父、金日成主席が生誕してから4月15日で110年がたった。

この日にあわせ北朝鮮が弾道ミサイルの発射や核実験に踏み切る可能性が指摘されるなど、北朝鮮の動きが警戒される中で、安全保障・戦略研究を専門とする道下徳成・政策研究大学院大学理事、副学長が登壇。

「朝鮮半島の安全保障と日本の対応」と題し、北朝鮮のミサイル開発と今後のゲームプラン、韓国の対応、日本がとるべき対応の3点について話した。

 

司会 澤田克己 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)

 


会見リポート

日米韓で拡大抑止協議を

塚本 壮一 (NHK出身)

 ロシアのウクライナ侵攻や台湾問題は、朝鮮半島情勢とどのような関係にあるのか。「カメラを引いて大きな流れを見る」(道下氏)ことの重要性に気付かされる会見となった。

 ウクライナ侵攻は、北朝鮮にとってマイナスとプラスの両面があると分析する。米が北朝鮮との交渉に乗り出す余裕を失う側面がある一方、バイデン政権がアフガニスタン撤退で失敗し、ウクライナ侵攻も阻止できなかった中で11月に中間選挙を迎えることは、北朝鮮にとって好機と映ると解説した。米朝が緊張から対話へと大転換した2006年の再現を狙って、北朝鮮が米を相手に瀬戸際外交を繰り広げるシナリオを示す。

 朝鮮半島と台湾問題の容易ならざる関係性も問題提起した。北朝鮮のミサイル能力の向上、特に長距離巡航ミサイルと弾道ミサイル潜水艦は日米の対応能力に負担を加え、日米同盟が寄与する台湾防衛に悪影響が及ぶという指摘である。さらには、中国が北朝鮮に軍事支援を行い、朝鮮半島で危機を醸成する可能性もあるという。日米は、北朝鮮と台湾の二正面作戦を強いられることになる。

 であるからこそ、韓国をパートナーに引き入れ、日米韓3カ国で拡大抑止協議を行うなど、安全保障での連携を強める必要があると説く。韓国で外交安保や日本の専門家が加わる尹錫悦次期政権が発足するこのタイミングがチャンスだと強調した。道下氏は、次期政権の外相に指名された朴振氏について、これまでの付き合いから、有能かつ専門的な議論ができる人物と紹介した。韓国の新政権といかに相対するのか、日本側の覚悟も問われるということだろう。

 道下氏は、日本国内でも、日米韓の中での役割や、どうリスクを乗り越えるのかを考えるべきと訴える。敵基地攻撃能力の保有が必要とも言明した。会見は、北朝鮮を語りながら、日本が新たな状況の到来を自覚し、合理的な着地点を模索しながら議論を深めるよう促すものとなった。


ゲスト / Guest

  • 道下徳成 / Narushige Michishita

    政策研究大学院大学理事・副学長 / Member, Board of Trustees, Vice President , Professor National Graduate Institute for Policy Studies (GRIPS)

研究テーマ:朝鮮半島の安全保障と日本の役割

ページのTOPへ