2022年05月12日 14:00 〜 15:30 オンライン開催
「沖縄復帰50年」(7) 上間陽子・琉球大学教授

会見メモ

沖縄の夜の街で働く10~20代の女性の聞き取り調査・支援に携わる上間陽子・琉球大学教授が、若いシングルマザーなど厳しい状況で生きる女性たちの現状を話した。

 

司会 早川由紀美 日本記者クラブ企画委員

 

※動画は非公開です。

 

『裸足で逃げる』(太田出版、2017年)

『海をあげる』(筑摩書房、2020年)


会見リポート

若い女性の痛み 行政の弱さ

明珍 美紀 (毎日新聞社編集編成局)

 「沖縄には生きるため、家族を養うために基地の周辺や港町で客を取る女性たちがいた」「米兵と沖縄の女性との間に生まれた。だが、米国に帰った父の行方は分からない」――。2005年の夏、私は戦後60年の連載企画のため、沖縄に通っていた。日本の敗戦後も米軍基地が集中する現実は自己の尊厳やアイデンティティーの喪失と無関係ではなかった。

 いま、上間陽子さんが取り組む、沖縄の若い女性を対象にした「ふたつの社会調査」、すなわち、風俗業界で働く若者と、若年出産した女性たちへの聞き取りでは、生活困窮が深刻化していること、また、当事者に虐待や性暴力の被害者が多いことが浮かび上がる。基地の問題が直接、絡んでくるわけではないが、「本土復帰50年」に引きつけて言えば「復帰が遅れたことが行政の足腰の弱さにつながっている」と上間さんは指摘する。被害を受けた子どもや女性たちを行政がケアする際、「権利の概念、人権を大事にすることが徹底的に弱くなっている」という。

 「若年ママの出産、子育ての応援シェルター」として昨年10月、沖縄に開設された「おにわ」は、出産前から出産後100日まで宿泊できる民間の施設で、上間さんが共同代表を務める。

 「私たちが若いママを大事にすれば、ママは赤ちゃんを大事にする」と上間さん。個々人、それぞれの生活を慈しむことを民間が行い、将来的には「行政に引き継いでいきたい」という。

 〈この海をひとりで抱えることはもうできない。だからあなたに、海をあげる〉

 上間さんの初のエッセー集『海をあげる』(筑摩書房)にこんな一節があった。基地建設のために土砂が投入される海。そして、海を愛してきた沖縄の人々の痛み。私たちは自分事として引き受けなければいけない。


ゲスト / Guest

  • 上間陽子 / Yoko UEMA

    琉球大学教授

研究テーマ:沖縄復帰50年

研究会回数:7

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