2022年04月22日 14:00 〜 15:30 10階ホール
「沖縄復帰50年」(4) 田中均・国際戦略研究所理事長

会見メモ

田中均さんは外務省北米局審議官として、米軍普天間飛行場の返還交渉に携わった経験をもつ。

中国の台頭、ロシアによるウクライナへの侵攻と世界を取り巻く安全保障環境が変化している中で日本はどうすべきなのか。

「日本の防衛体制のトータルな見直しが必要。沖縄の米軍基地を縮小し、グアムを含め米軍との一体的な防衛体制を作るべき」。

ウクライナ問題については「米国がロシアと政治的合意をはかるしかない」と指摘した。

 

司会 佐藤千矢子 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)


会見リポート

基地問題 大きな枠組み描け

佐藤 千矢子 (毎日新聞社論説委員)

 田中均さんは、1996年、米軍普天間飛行場の返還交渉に外務省北米局審議官として関わり、2002年の日朝首脳会談を実現に導いた著名な元外交官だ。今回「沖縄復帰50年」シリーズで登壇をお願いすると、「ウクライナ問題を踏まえた国際安全保障環境の大きな変化の中で、沖縄問題をどう考えるかという話をしたい」と事前に言われた。

 記者会見はそれに通じる話から始まった。冒頭、田中さんは「沖縄問題は沖縄問題だけ切り取って基地問題をやっても成果は得られない。拉致問題もそうだ。それが外交だ。大きな絵、枠組みの中で沖縄問題を位置づけて基地の縮小を図っていかないといけない」と語った。

 普天間返還交渉は、冷戦崩壊で旧ソ連の脅威がなくなり、沖縄で少女暴行事件をきっかけに反基地運動が激しさを増し、日米安保体制が見直される中で行われた。国際的な安全保障環境の変化を見ながら、大きな枠組みの中でものごとを思考して動かすべきだというメッセージを、田中さんは会見で繰り返し強調した。

 普天間返還は合意から四半世紀以上が過ぎても実現せず、そのこと自体は「慚愧の念に堪えない」と振り返ったが、それでも大きな絵を描き、動かすことに挑戦してきた元外交官の言葉には、説得力がある。

 会見の前日は、外交評論家の岡本行夫さんをしのぶ会が開かれ、田中さんも出席したという。いろんな問題で一致する両氏の間で、一つだけ意見が大きく違ったのが普天間返還合意についてだったというエピソードも興味深かった。

 今後の日本の防衛のあり方については「防衛体制のトータルな見直しが必要。沖縄の米軍基地を縮小し、グアムを含め米軍との一体的な防衛体制を作るべきだ」との考えを示した。ウクライナ情勢という環境変化の中で、沖縄の米軍基地問題を含めた日本の安全保障問題をどう考えていくか、一つの視座を与えてくれた貴重な会見となった。


ゲスト / Guest

  • 田中均 / TANAKA Hitoshi

    国際戦略研究所理事長 / Chairman, Japan Research Institute

研究テーマ:沖縄復帰50年

研究会回数:4

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