2022年04月14日 13:00 〜 14:30 オンライン開催
「沖縄復帰50年」(2) 三上智恵さん

会見メモ

※標記会見は、YouTubeで公開しません。

 

オスプレイ配備とそのためのヘリパッド建設に反対する住民の姿を記録した「標的の村」(2012年/キネマ旬報ベストテン文化映画部門1位)などの作品がある三上智恵さんが拠点とする読谷村からリモートで会見した。

三上さんは毎日放送、琉球朝日放送を経て2014年にフリーに。映像作品や著書などで沖縄の苦悶を描き続けている。

 

司会 佐藤千矢子 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)


会見リポート

変わらぬ現実 変わらぬ報道

早川 由紀美 (東京新聞編集委員)

 石垣島など沖縄県の南西諸島では自衛隊の配備が進む。映画監督の三上智恵さんが沖縄からのオンライン会見で示したのは「沖縄また戦場に」「住民保護余力なく」などの見出しが並ぶ昨年末の地元紙。台湾有事の際、米海兵隊が南西諸島に臨時の攻撃用軍事拠点を置くことなどが盛り込まれた日米共同作戦原案の内容を伝える記事だ。

 戦争との距離が近づく中で迎える復帰50年に「ことほぐ(祝う)空気は沖縄にはない」と三上さんは断言する。報道の失敗が今の事態を招いたと繰り返した。腫れ物に触るような沖縄報道、秘話や資料発掘に埋没し、今の問題につなげられていない太平洋戦争の報道…。耳が痛かった。とくに沖縄については取材をするたび、表面をなぞることしかできていないという自覚はあり、ふがいなさを感じ続けてきた。

 限られた日数で沖縄の奥底に触れることは難しい(言い訳ですが)。「寄り添う」という言葉もどこかきれいごとだ。だが沖縄の歴史や現状から学ぶことはできる。

 三上さんは映画「沖縄スパイ戦史」や同名の著書で陸軍中野学校出身の工作員たちが沖縄の少年らを巻き込んで展開した「秘密戦」の実相を暴く。秘密戦には、誰が米軍に情報を漏らす可能性があるかなどの情報収集が含まれる。日本軍による住民虐殺につながった。「軍隊は住民を守らないという苦い薬を沖縄戦から持って来る」との思いが取材の出発点だったという。

 今年2月に防衛省陸上幕僚監部が記者向け説明会で配布した資料の中で、自衛隊が警察や米軍と連携して取り組む事態として、破壊活動などと並んで反戦デモと明記していたことが国会で追及された。戦闘を前提として、都合の良い住民か否かという色分けは続いているのではないか。民主主義はないがしろにされかねない。復帰50年を経ても沖縄の変わらぬ現実から学び、報道機関が向き合うべきことはたくさんある。


ゲスト / Guest

  • 三上智恵 / Chie MIKAMI

    ジャーナリスト、映画監督

研究テーマ:沖縄復帰50年

研究会回数:2

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