会見リポート
2022年04月08日
15:30 〜 17:00
10階ホール
「ウクライナ」(8) 吉川元偉・国際基督教大学特別招聘教授、元国連大使
会見メモ
2013年から2016年まで国連大使を務めた吉川元偉・国際基督教大学特別招聘教授が、「ウクライナ情勢と国連の危機」をテーマに話した。
司会 大内佐紀 日本記者クラブ企画委員(読売新聞)
会見リポート
「第4のうねり」起こせるか/安保理改革、日本が主導を
川北 省吾 (共同通信社編集委員)
第2次大戦中の1943年末、ルーズベルト米大統領は暖炉脇から国民に語りかけた。「米英ソ中が平和を保つ決意の下に一致協力している限り、新たな大戦を仕掛ける侵略国が出てくることはありません」
有名な「4人の警察官」構想である。仏を加えた5カ国はこの青写真に基づき、45年に国連安全保障理事会の常任理事国となる。ところが今回、警察官のロシア自ら国際法を破り、ウクライナへ侵攻した。
国連総会は非難決議を採択し、人権理事会におけるロシアのメンバー資格を停止した。だが、肝心の安保理が動かない。プーチン政権が常任理事国の拒否権を行使し、侵攻非難決議案を葬り去ったからだ。
吉川さんは国連憲章27条3項のただし書きに注目する。安保理の一部決定については「紛争当事国は投票を棄権しなければならない」とした規定だ。留保条件を削除できれば「拒否権の使用を制限できる」
安保理の構成も疑問視する。ソ連は消滅し、中国の国連代表権は台北から北京政府に移った。英仏は植民地を失い、中規模国家となった。45年当時の「五大国」を前提とした憲章は「時代遅れ」と言い切る。
長く国連外交に携わってきた吉川さんだけに、憲章改正が難しいことは百も承知だ。実現には常任理事国を含む3分の2の加盟国の批准を要する。長く険しい道である。
それでも粘り強く、改革を訴えていくことが「国際世論を動かすことになる」と話す。「軍人が武器で戦うように、外交官は言葉で戦わなければならない」
安保理改革のうねりは過去3回あったと振り返る。①植民地の独立が相次いだ60年代②冷戦終結後③イラク戦争後―で、いずれも世界が大きく動いた時期だ。「ウクライナ危機で『第4のうねり』が起こるかどうか。改革の旗を振ってきた日本がぜひ動かしてほしい」と結んだ。
ゲスト / Guest
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吉川元偉 / Motohide Yoshikawa
国際基督教大学特別招聘教授、元国連大使 / Distinguished Professor, International Christian University (ICU) / Former Ambassador and Permanent Representative of Japan to the United Nations
研究テーマ:ウクライナ
研究会回数:8