2022年04月04日 15:00 〜 16:30 10階ホール
「ウクライナ」(6) 秋山信将・一橋大学大学院教授

会見メモ

核軍縮、軍備管理、エネルギー安全保障などを専門とする秋山信将・一橋大学大学院教授がロシアが核を使用する可能性はあるのか、原子力発電所を占拠したのはなぜか、ウクライナへの軍事侵攻が今後の核軍縮にもたらす影響などについて話した。

 

司会 大内佐紀 日本記者クラブ企画委員(読売新聞)


会見リポート

ロシア、戦闘終結へ核使用の可能性も

菊地 直己 (朝日新聞社国際報道部)

 ロシアによるウクライナ侵攻の長期化が懸念されるなか、核兵器使用や核軍縮の側面に焦点を当てた会見は、今後のウクライナ危機の展開を考える上で貴重な機会となった。

 秋山氏は、ロシアが侵攻前から段階を踏んで核使用の脅しをエスカレートさせてきた経緯を紹介した上で、「戦況を好転させて戦闘を終結させるため、あらゆる手段がなくなった場合は核使用も考えるだろう」と述べた。一方、核の主導権を握られてしまった米国や北大西洋条約機構(NATO)側には、エスカレートを防ぐ手段がない現状にもふれた。

 ロシアの核使用リスクに警鐘を鳴らしつつ、「核があったらロシアが侵攻してこなかった」とするウクライナ側の主張には疑問を投げかけた。こうした言説は「政治的な力を持つ」と認めながらも、旧ソ連解体時にウクライナにあった核弾頭は誤爆の恐れがある状態で放置されるなど、実際には使えない状況だったとして、「『核保有を諦めたから侵略された』という言い方は短絡的だ」と語った。各国の情報戦は活発化しており、事実に基づいた議論の重要性を改めて認識させられた。

 また、米国と日本の「核共有」の議論のあり方についても踏み込んだ。核共有は安全保障上の観点から「有利にはならない」との考えを示す一方で、ウクライナ危機によって「すでにパンドラの箱が半分開いた」と指摘。会場からの「議論の必要性はあるのか」という質問にも、「議論せずに封じ込めれば逆に『核の神話』を維持し、『核があった方がいい』という議論がくすぶり続ける」として、「議論することイコール核共有につながらない」と応じた。安全保障リスクの高まりで、核抑止の議論も熱を帯びそうだ。だが、秋山氏が強調するように、核抑止派と核廃絶派の対立に陥ることなく、核軍縮や不拡散に向けて落ち着いた環境での熟議を期待したい。


ゲスト / Guest

  • 秋山信将 / Nobumasa, AKIYAMA

    一橋大学大学院教授 / professor of graduate school, Hitotsubashi University

研究テーマ:ウクライナ

研究会回数:6

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