会見リポート
2022年04月11日
13:00 〜 14:30
10階ホール
「ウクライナ」(9) 川島真・東京大学大学院教授
会見メモ
アジア政治外交史、中国外交史などを専門とする川島真・東京大学大学院教授が、ロシアのウクライナ侵攻に対する中国の対応を解説した。
司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)
会見リポート
ロシアとの同一視に躊躇/欧州へ配慮 微妙な中国の立場
森 永輔 (日経BP日経ビジネス )
ロシアが2月24日、ウクライナに軍事侵攻した。ウクライナはソ連(当時)を構成した共和国の1つ。そのウクライナを再び勢力圏に収めるべく、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が行動を起こした--。ロシアに詳しい専門家の多くがこのような見立てを示す。
ロシアのこの動きを中国はどのように評価するのか。その評価は、台湾武力統一にどのような影響をもたらすのか。中国の専門家のみならず、安全保障の専門家も、この点に興味を駆り立てられた。先の見立てが正しいならば、ロシアとウクライナの関係は、中国と台湾の関係に投影できるからだ。
中国の専門家である川島真・東京大学教授が、これらの問を考えるための貴重なサジェスチョンを与えてくれた。同氏が繰り返したのは、中国が非常に複雑な方程式に取り組んでいることだ。
中国が米国への挑戦を今後長く続けていく上で、ロシアは重要なパートナーだ。よって、ウクライナ侵攻を巡ってもロシア側に立つ。
けれども、ロシアとの関係を完全な同盟にはしない。それどころか、世界第2の軍事大国であるロシアは、中国にとって乗り越えるべき存在でもある。理念においても、金科玉条としてきた「主権の尊重」の大看板を下ろすわけにいかない。
さらに、中国はロシアと同一視されたくない。ロシアとひとくくりにされ、西側との経済関係にひびが入るような事態は避けたい。中国経済は西側との協調と相互依存によって成長してきた。この構造は今後も変わらない。
習近平政権にとって最も重要なのは、秋に控える中国共産党大会で習政権の継続を決めること。これを阻害するリスクとなるような事態は避けたいし、リスクとなる行動は取らない。
このような複雑な方程式を解くのに懸命な習政権が、台湾武力統一への動きを早めることはあるのか。答はおのずと「考えづらい」という方に傾く。
ゲスト / Guest
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川島真
東京大学大学院教授
研究テーマ:ウクライナ
研究会回数:9