2022年04月06日 13:00 〜 14:30 10階ホール
「ウクライナ」(7) 鶴岡路人・慶應義塾大学准教授

会見メモ

国際安全保障が専門の鶴岡路人・慶應義塾大学准教授が、ロシアのウクライナ侵攻をNATO(北大西洋条約機構)という切り口で分析・解説した。

 

司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)


会見リポート

抑止で読み解くウクライナ

松尾 圭介 (時事通信社外信部編集委員)

 「抑止」とは何か。探求を続ける研究者の視点から、不透明感漂うウクライナ情勢をさまざまな視点から切り分けて分析した。

 首都攻略に失敗したロシアだが、ウクライナが求めている飛行禁止区域の設定や、ポーランド軍の戦闘機供与を北大西洋条約機構(NATO)に断念させた。論点を絞ってみれば「参戦したと見なす」と警告するロシアが抑止に成功している面がある。背景としては、NATO側に存在する「第3次大戦だとか、全面核戦争だとか、そういうところに行ってしまうかもしれないという恐れ」を指摘した。

 しかし、3月24日にブリュッセルで行われたNATO首脳会議後、記者会見したバイデン米大統領は、ウクライナで化学兵器が使われれば、米国とNATOは「対抗措置を取る」とロシアに警告した。バイデン氏は昨年12月、ウクライナ問題について「米国が単独で軍事力を使うことは検討していない」と早々に表明し、かたくなに軍事介入は否定してきたが、ここへ来てその可能性を示唆してみせた。

 これについても「もうこれはウクライナ防衛という議論ではない」からだと読み解いた。ウクライナ情勢は全く違った局面を迎え「大量破壊兵器の使用を許さないという国際規範に対する直接的な挑戦」をロシアが行ったことになる。強力な警告を発してロシアの化学兵器使用の抑止を試みている。

 一方で「合理性を持った相手しか抑止できない」という抑止論の弱点も認めた。2018年のテレビ取材で、プーチン大統領は「誰かがロシアを滅ぼそうと決意したなら、ロシア人には反撃する権利がある。もちろん、人類や世界に破滅をもたらすが、私はロシア人で、ロシアの国家指導者だ。ロシアの存在しない世界をロシア人がなぜ必要とするだろうか」と述べている。「これはなかなか抑止が通用しない世界かもしれないという辺り、ちょっと注意しないといけない」というのが鶴岡氏からの警告だ。


ゲスト / Guest

  • 鶴岡路人 / Michito Tsuruoka

    慶應義塾大学総合政策学部准教授 / Associate Professor, Faculty of Policy Management, Keio University

研究テーマ:ウクライナ

研究会回数:7

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