2022年04月13日 15:30 〜 17:00 10階ホール
「こども家庭庁」(1) 池本美香・日本総合研究所上席主任研究員

会見メモ

子ども政策の司令塔となる「こども家庭庁」を創設する法案の審議が来週にも始まる。

本シリーズでは「こども家庭庁」で何が変わるのか、子ども政策の現状や課題、少子化の動向、世界の動きなども踏まえ、子ども政策のあり方を考える。

第1回ゲストとして、保育・教育政策などを専門とする日本総合研究所上席主任研究員の池本美香さんが登壇。

こども家庭庁の設置にあわせ検討すべきこととして、子どもコミッショナーの設置、保育制度の抜本見直し、インクルーシブ教育の推進--の3点を挙げ、その必要性を海外の事例もまじえ話した。

 

司会 辻本浩子 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)


会見リポート

権利擁護の第三者機関を

樋口 郁子 (読売新聞社生活部次長)

 少子化対策や子どもの貧困、虐待など、子どもに関する幅広い分野を担当する「こども家庭庁」を2023年4月に設置する法案が、今国会で審議されている。日本総研の池本美香上席主任研究員は、国際比較を通して日本の子育て政策・制度を論じてきた研究者の視点から、新庁で検討すべき3つの課題を挙げた。

 1点目が、子どもの権利を擁護する第三者機関「こどもコミッショナー」だ。法案の検討段階では、与党内にも第三者機関の設置を求める声があったものの、結局、盛り込まれなかった。池本氏は「諸外国のコミッショナーは、コロナ禍の子どもへの影響やいじめなどの問題について調査し、発信している」と紹介。「子ども目線」の政策実現のために「新庁とセットで設置を」と訴えた。

 幼児教育・保育の制度についても、抜本的な見直しを求めた。法案では、未就学児の施設のうち、保育所と認定こども園は新庁の所管とし、幼稚園は文部科学省の管轄に残る。長年の課題である「幼保一元化」は、今回も見送られそうだ。池本氏は「同じような施設を2省庁が別々に検討することは、行政的に非効率だ」と厳しく指摘。保育施設にも認可や認可外など様々な形態があり、「保育の質や保育料負担に不公平感がある」とした。

 最後に、障害の有無を問わず、子どもたちが同じ環境で学べる「インクルーシブ教育」の推進を挙げた。日本では、障害児だけを対象とする特別支援学校の児童・生徒が増えており、国際的な流れに逆行しているという。

 日本では昨年、出生数が84万人と過去最少を更新し、コロナ禍で子どもの虐待や自殺も深刻化している。「新庁への期待は何か」との質問に、池本氏は「子どもの支援という点を明確に打ち出してほしい」と明言。「まずは子どもが幸せな社会を作ることが必要だ」という熱のこもった言葉に、深くうなずかされた。


ゲスト / Guest

  • 池本美香 / Mika Ikemoto

    日本総合研究所上席主任研究員 / Advanced senior economist, The Japan Research Institute, Limited

研究テーマ:こども家庭庁

研究会回数:1

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