2022年03月31日 14:00 〜 15:30 オンライン開催
著者と語る『新型コロナの不安に答える』宮坂昌之・大阪大学免疫学フロンティア研究センター招へい教授

会見メモ

科学的エビデンスをもとに新型コロナウイルスの最新情報や、ワクチンの有効性・安全性などを解説した新刊本(講談社現代新書)が3月31日、刊行された。

著者で免疫学の第一人者である宮坂昌之・大阪大学免疫学フロンティア研究センター招へい教授が「新型コロナの誤解と誤謬」をテーマにリモートで会見した。

 

司会 浅井文和 日本記者クラブ企画委員


会見リポート

新型コロナの誤解を解く

山田 哲朗 (読売新聞社論説委員)

 新型コロナに関しては、誰もがそれなりの体験を積んで自分の意見を持つようになっている。ネット上には誤った情報が飛び交っている。ウイルスや免疫の仕組みは複雑だが、最新の情報を入手し理解するのは容易でない。

 「不都合な真実より、耳に心地よい話の方を聞きたい」という人間の心理もあり、何が正しいのか冷静に判断するのは意外に難しい。

 免疫学の権威である宮坂昌之・大阪大学名誉教授は、査読付き論文などの確実な根拠やデータに基づき、現在進行中の事態の「真実」を分かりやすく語ってきた。一般向けの本3冊も出版している。

 「コロナは風邪程度だからもう大丈夫」という安易な楽観論に対しては、「そうあってほしいが、種々の後遺症があり、とてもただの風邪とは言えない」「高齢者にとってはまったく違う病気」と戒める。

 感染対策についても「一つだけで完全な対策はない」という前提のもと、マスクを着用する、人との間隔を保つ、換気をする、ワクチン接種を受けるといった多重の防護による効果が相乗的に働いて、感染リスクが大幅に低下することを指摘する。

 これは逆に言えば、「ワクチン接種だけではコロナを打ち負かすことができない」という意味だ。ワクチン接種率がある程度、上昇しても、併せて行動制限や社会的規制を続けることの重要性を示唆している。

 また、目立つニュースに飛びつくだけで、数字の裏側にある統計的な意味を確認したり、その後に情報が訂正されたことをフォローしたりすることのない一部メディアのセンセーショナリズムにも苦言を呈する。

 極論を排し、政府とは離れた第三者的な立場から、落ち着いた語り口で間違いを一つずつ正していく宮坂名誉教授の態度は、コロナ時代に求められる専門家の資質の一つと言えるだろう。


ゲスト / Guest

  • 宮坂昌之

    大阪大学免疫学フロンティア研究センター招へい教授

研究テーマ:著者と語る『新型コロナの不安に答える』

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