2022年04月19日 13:30 〜 15:00 9階会見場
「科学技術立国」(2) 坂本幸雄・元エルピーダメモリ社長

会見メモ

かつては世界シェア5割を誇った日本の半導体産業はいまや10%程度のシェアと低迷を続けている。

半導体大手のエルピーダメモリの元社長である坂本幸雄さんが、日本の半導体産業が凋落した要因、過去どのような道をとるべきだったのか、今後とるべき道などについて話した。

 

司会 中山淳史 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)

 

 

 


会見リポート

戦略欠く日本の半導体産業/復活のため知恵を絞れ

小林 哲 (朝日新聞社科学みらい部大阪担当部長)

 かつて世界を席巻した「日の丸半導体」は、科学技術立国・日本の象徴でもあった。その後の凋落、そして再興を託されたエルピーダメモリの倒産から今年で10年。エルピーダの社長を務めた坂本幸雄さん(74)は、日本の半導体産業の敗因について「戦略をきちんと立てられず、力を入れる製品を絞り込めなかった。海外の経営者との関係構築もできなかった」と分析する。

 1990年代に坂本さんが日本法人の副社長を務めた米テキサス・インスツルメンツは、アナログ半導体に特化する合理化で強みを発揮し、売り上げは3倍近く増えて約2兆円に。経営戦略に基づきトップがライバル社と交渉を重ねて勝ち取った成果という。「日本は負けるべくして負けた」。エルピーダでは経営改革に取り組み、業績を大幅に改善させたが、リーマンショック後の需要低迷と急激な円高で行き詰まった。「倒産の理由は今でもよくわからない」と悔しさをにじませた。

 日本政府は、台湾大手TSMCの工場を熊本県に誘致し、約6千億円を支援する計画だ。新たな振興策については「話にならない」と厳しい。欧米や韓国、中国の政府支援は数兆円から数十兆円規模と桁違いだ。再興につなげる戦略を示せておらず、場当たり的な対策に喜んでいる場合ではないという。

 それでも日本復活の道はあるとみる。業界再編を進め、需要が見込める自動車用の次世代プロセッサーの開発を急ぐ。知恵を絞り、足りない人材は海外企業と組むなどして総力を結集すれば不可能ではないという。「世界に通用する製品を作っていかないと方向を誤る。選択肢はあるのに、やらないのはまったく理解できない」。問題は、政府主導でそうした戦略を描けないことにありそうだ。ワクチン開発、再生可能エネルギー導入などにも通底する日本の課題だと感じた。


ゲスト / Guest

  • 坂本幸雄 / Yukio Sakamoto

    元エルピーダメモリ社長 / Former president, Elpida Memory, Inc.

研究テーマ:科学技術立国

研究会回数:2

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