2022年04月13日 13:15 〜 14:45 10階ホール
「3.11が防災行政にもたらしたもの」阿部守一・長野県知事

会見メモ

東日本大震災から11年が経った。未曾有の震災は、被災自治体以外の自治体が災害対策を見直す契機となった。

長野県は東日本大震災翌日の長野県北部地震、御岳山噴火、台風による水害など、この間多くの災害を経験してきた。

復旧・復興、防災対策の陣頭指揮をとってきた阿部守一知事が、これらの災害から得た8つの教訓、県の取り組みについて話した。

 

司会 小林伸年 日本記者クラブ企画委員(時事通信)


会見リポート

防災の基本は地域力/死者ゼロは〝奇跡〟にあらず

久慈 省平 (テレビ朝日報道資料部長)

 遠いところで起きた災害を「人ごと」にせず、「わがこと」にするべきなのは防災行政も同じだろう。東日本大震災だけでなく、全国で頻発する災害の教訓を、他の自治体はどう生かしていくのか。

 長野県は東日本大震災の翌日に最大震度6強の地震が起きたのをはじめ、この10年余りで次々に大規模災害に見舞われた。阿部知事はその経験から「行政の縦割りをなくす」、「官民協働で対応する」ことなど、8つの教訓をあげた上で、「地域力が重要」と力説した。

 最大震度6弱を観測した2014年の神城断層地震(長野県による独自名称)では、200棟以上の家屋が全半壊したが、下敷きになった人たちを住民が協力して救助し、一人の死者も出さなかった。「白馬の奇跡」と評されたが、阿部知事は「奇跡ではなく必然」と強調した。都会と違い、「隣に誰が住んでいるのかを知っている強み、日頃からの地域の支え合いによるもの」と分析した。

 死者・行方不明者63人という戦後最悪の噴火災害となった同年の御嶽山噴火では、速やかに国の現地対策本部が設置され、国と県、自治体がうまく連携できたという。救助活動でも警察、消防、自衛隊のそれぞれが強みを出し合った。阿部知事は国から派遣された現地対策本部長との対話を重視し、「こちらから悩みを打ち明けた」ことで、お互いに本音トークができるようになったエピソードも紹介した。

 被災地の子どもを応援する「子どもリフレッシュ募金」、「逃げ遅れゼロプロジェクト」など独自政策を打ち出す長野県。阿部知事は「私がいなくても平時であれば仕事は回る。緊急時に責任と権限をフル活用できるかが大事」と話す。

 「災害時は真っ先に自治体の長に電話して、困っていることを聞く」と言うように、長野県の経験を「わがこと」とするには、阿部知事のようなトップ自らの対話力が不可欠と感じた。


ゲスト / Guest

  • 阿部守一 / Shuichi Abe

    長野県知事 / Governor of Nagano Prefecture

研究テーマ:3.11が防災行政にもたらしたもの

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