2022年03月29日 13:30 〜 15:00 9階会見場
「五輪後のスポーツを考える」(3) 上林功・追手門学院大学准教授

会見メモ

東京大会のために新設、整備された施設を今後どういかすのか。スポーツ文化学を専門とする上林功・追手門学院大学准教授が海外の例なども踏まえ、スポーツ施設の都市化、共創化の可能性について話した。

 

司会 森田景史 日本記者クラブ企画委員(産経新聞)


会見リポート

会場点在がレガシーの課題に/周辺含むにぎわい「共創」を

名取 裕樹 (共同通信社特別編集委員)

 スポーツに関する建築や都市計画などの技術系専門家でもある上林功氏は、東京大会に「次世代に向けた新しい取り組みはあった」としながらも、ベイエリア地区(有明、お台場周辺)を例に挙げ、競技会場が一帯に点在して「ネットワーキングされていない」ことが、レガシーとしての発展に向けた課題になると問題提起した。

 次の2024年パリ大会は、会場の95%が既存か仮設。それもパリの再興計画に基づき、開会式を市の中心部で行うような「スポーツの都市化」の試みと、都市計画を同時進行させているという。一方の東京大会に「スポーツと街を融合させる視点はあったのか」と、マスタープランの欠如を指摘する。

 評価したのは、仮設の有明体操競技場だ。展示場として約10年間活用して解体される予定で、観客席などには撤去や再利用がしやすい木材を使用した。民間事業者に運営権を売却するコンセッション方式を採用した有明アリーナも、柔軟な設備投資が可能になり画期的だと述べた。

 その上で、10代のスケートボード選手が躍動した有明アーバンスポーツパークに「ただのスケボーパークではなく、周りの道路を使いながら、街と一体となった(誰もが参加できる)スポーツが生まれたらいい」と期待を寄せた。発想の転換にと挙げたのが、スポーツ施設の周囲に行政や医療、商業施設を併設・集約するといった、海外で進む「エリアマネジメント」の事例だ。

 日本でもプロ野球DeNAが横浜スタジアムを市民に開放し、地元の大学や企業などと野球を核として周辺地域を盛り上げる「都市化」や、応援するファンと一緒ににぎわいを創り出す「共創化」の事業や運用に取り組んでいることを紹介。最新技術を使った遠隔臨場感という新たなスポーツ体験の試みや、スポーツを仲立ちとした未来の都市構想にも話は及んだ。


ゲスト / Guest

  • 上林功 / UEBAYASHI Isao

    追手門学院大学准教授 / associate professor, Otemon Gakuin University

研究テーマ:五輪後のスポーツを考える

研究会回数:3

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