2022年03月16日 15:00 〜 16:00 9階会見場
「3.11から11年」(3) 達増拓也・岩手県知事

会見メモ

達増拓也・岩手県知事に、発災から11年の現状と課題を聞いた。

 

司会 川上高志 日本記者クラブ企画委員(共同通信)


会見リポート

「地方にこそ、人材育てる力」

松本 克夫 (日本経済新聞出身)

 東日本大震災の被災地でよく耳にするのは、宅地造成や災害公営住宅の整備などハード面は完成したものの、人口が流出し、大量の未利用地や空き家が残ったという嘆き節である。岩手県も事情は同じだが、達増知事は悲観していない。同知事によれば、岩手県内の沿岸12市町村の人口は、津波の犠牲者や行方不明者が存命であったと仮定して計算すれば急激な減り方にはなっていないし、近年の減少は復興事業関係者が県外に去ったことによるものだ。未利用地や空き家も、移住者などの受け入れ先と考えれば決してお荷物ではない。実際、岩手県内へのUIターン就職者や移住相談件数は増えている。令和3年度には県外学生の県内就職者数は前年度の2倍以上の221人に達した。高卒者の県内就職率も過去最高の73 %に達するなど若者の地元志向も見て取れる。

 それに岩手県が何よりも誇れるのは人を育てる力である。達増知事は「岩手県は大リーグで活躍する大谷翔平、菊池雄星の両選手、スキージャンプで金メダルを獲得した小林陵侑選手、テノール歌手の福井敬氏らスポーツや文化で世界に羽ばたく人材を輩出している。人口減少イコール地方の衰退と見られがちだが、自然環境、人材への投資、スポーツ・文化施設の充実などにより人を育てる力は高まっている」と強調する。

 被災地は東京一極集中の是正にも貢献できるという。「首都直下地震から東京を守るには一極集中の是正が必要だ。災害公営住宅は目的外利用が可能になっており、若者の受け入れにも活用できる。首都圏からリスクが少なく暮らしやすく働きやすいところに移るとすれば、岩手県の復興の現場も行き先の候補になり得る。日本全体のためにも、被災前にはなかったようなより良い復興を目指したい」と意気込む。掲げる標語は、「復興とともに、地方でこそ、人材育成!」である。


ゲスト / Guest

  • 達増拓也 / Takuya Tasso

    岩手県知事 / Governor, Iwate

研究テーマ:3.11から11年

研究会回数:3

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