2022年03月22日 13:00 〜 14:30 10階ホール
「科学技術立国」(1) 上山隆大・内閣府総合科学技術・イノベーション会議常勤議員

会見メモ

科学技術政策の立案に携わってきた内閣府総合科学技術・イノベーション会議常勤議員の上山隆大さんが、「国家の大計としての科学技術とイノベーション政策:大学ファンドで何が変わるのか」のテーマに、10兆円規模の大学ファンドの意義や今後の政策のあり方を話し、質問に答えた。

 

司会 江木慎吾 日本記者クラブ専務理事兼事務局長


会見リポート

大学ファンドで世界と競争

滝 順一 (日本経済新聞社編集委員)

 「今やらないと(ハーバード大学など欧米トップ大学に)永遠に追いつかない」。上山隆大・内閣府総合科学技術・イノベーション会議常勤議員は10兆円規模の「大学ファンド」創設の狙いの一端をこう述べた。

 日本発の論文数の国際シェア低下や博士課程進学者の減少など日本の研究力の弱体化が指摘される。その原因を、政府が国立大学法人の運営費交付金を削減し競争的資金を充当してきた結果に求める声が多い。2月に関連法案が閣議決定された大学ファンドはここ10数年間の科学技術政策、大学政策の転換を示すものだと受け取れる。

 なぜ大学ファンドなのか。上山氏は「大学の裁量的経費が最重要だ」と説明した。競争的資金は「研究を将来価値ではなく現時点での評価で配分」するものだとし、資金の偏在や若手研究者に届きにくいなどの課題をもたらしたとする。

 一方で世界と伍して競争する意思と能力のある大学にファンドの運用益を配分する代わりに「交付金依存から脱する」ことを求めている。

 交付金でもなく競争的資金でもない、いわば第3の資金であり、大学当局が自らの競争力向上のため使えるお金だと位置付ける。

 上山氏は「科学技術イノベーション政策は科学の振興が主たる目的ではない」「国として大きな戦略、地球を考える戦略のよすが(よりどころ)となる」ことが大目的だと指摘した。政策の根本にある思想面の転換も大学ファンドの背景にある。

 上山氏が比較対象に挙げた海外のトップ大学は数兆円の資産が生む運用益を教育や研究に充てる。大学ファンドが日本の大学のキャッチアップを可能にするかとの質問に、上山氏は「私は楽観的にみている」と答えた。また、さまざま検討したが、「これ(大学ファンド)以外のオルタナティブを思いつかなかった」との吐露も印象深かった。

 


ゲスト / Guest

  • 上山隆大 / Takahiro Ueyama

    内閣府総合科学技術・イノベーション会議常勤議員

研究テーマ:科学技術立国

研究会回数:1

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