2022年03月10日 13:00 〜 14:00 オンライン開催
「3.11から11年」(1) 内堀雅雄・福島県知事

会見メモ

東日本大震災と東京電力福島第一原発事故からちょうど11年を迎える前日に、福島県知事の内堀雅雄さんがリモートで会見した。

未来を拓くをキーワードに「光と影」「挑戦」の2つを掲げ、県の現状と課題を話した。

内堀さんは2014年11月に知事に就任し、現在2期目。発災当時は副知事として震災、事故対応にあたった。

 

司会 坪井ゆづる 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞)

 


会見リポート

「ふくしまプライド」で挑戦

前田 史郎 (朝日新聞社論説委員)

 東日本大震災からの経過を示す福島県三春町の「3・11クロック」は、2月21日に4000日を表示した。「11年」よりも日数の方が、節目としてより重みがある。内堀知事はそう感じるという。

 地震、原発事故、津波、風評被害。世界史上まれな複合災害は、あまりにも大きな爪痕を残した。

 今、福島には光と影の両面がある。光は除染の完了だ。東京電力福島第1原発事故で放射性物質に汚染された広範囲の地域は生活圏での除染が進み、汚染物質の中間貯蔵施設への搬入が終わる。国道やJR常磐線も開通し、復興を後押しする。

 一方の影の部分は、今なお3万3千人超が県内外で避難生活を送っていること。とくに双葉、大熊、浪江各町の帰還はこれからだ。原発廃炉への道のりも遠く、燃料デブリの状況すらつかめない。旅行者に戻ってほしいが、新型コロナで情報発信の機会も奪われてしまった。

 知事が掲げるキーワードは「挑戦」だ。その一つは農産物輸出。事故で落ち込んだが、懸命な努力で持ち直し、モモやナシなどの輸出量は過去最高に達した。さらに伸ばしたい。イノベーションにも力を入れ、昨年のワールドロボットサミットでの地元勢の活躍を紹介、「ふくしまプライドです」と力を込めた。

 発災直後は副知事として緊急対応にあたった。原発事故による様々な問題で、各省庁にたらい回しにされたことがある。その苦い経験にも触れ、「復興に関しては復興庁のリーダーシップが重要」と強調する。

 来年春には処理水の海洋放出が控える。その賛否については「政府に万全の対策を求めていく」と述べるにとどめた。現段階では漁業者らの理解が十分に得られていないとの見解も示し、「風評被害払拭の努力が水泡に帰することはやめてほしい」と釘を刺した。その表情に、4000余日の葛藤がにじんでいた。


ゲスト / Guest

  • 内堀雅雄 / Masao Uchibori

    福島県知事 / Governor, Fukushima

研究テーマ:3.11から11年

研究会回数:1

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