2022年03月09日 13:00 〜 14:30 10階ホール
「ウクライナ」(2) 小泉悠・東京大学先端科学技術研究センター専任講師

会見メモ

ロシアの軍事・安全保障政策を専門とする小泉悠・東京大学先端科学技術研究センター専任講師が、プーチンの狙いや現状と今後ありうるシナリオなどについて話した。

 

司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)

 

 


会見リポート

核限定使用もあり得る

名越 健郎 (時事通信出身)

 ロシア軍のウクライナ侵攻で、メディアで大活躍する若手専門家の小泉悠氏が、「プーチンの戦争」を明快に解説した。多くの識者がロシアのウクライナ攻撃はあり得ないと予測を誤った中で、小泉氏は昨年3月の兵力増強時から軍事介入は十分あり得ると分析。ロシアと軍事のエキスパートとして「Winner Take All」の貫録が出てきた。

 小泉氏は、コロナ禍で歴史書を読むようになったプーチン大統領が昨年7月に発表した論文で、「ウクライナは手違いで独立した」「西側の手先になり下がった」と属国扱いしたことに着目。開戦演説がゼレンスキー政権をネオナチ扱いしたり、核兵器開発をしていると決めつけたことの矛盾を指摘した。

 開戦から2週間を経た戦況は、ウクライナ軍の善戦でロシア軍の進撃が遅れ、クレムリンの誤算がみられるとし、「ロシアの中途半端で不可解な作戦」の背景に政治的な制約があったと分析した。

 今後の展開では、「総合力ではロシアが強い。航空戦力を投入し、キエフはいつかは陥落する」とし、ゼレンスキー政権は西部のリビウなどに移動し、毛沢東型のゲリラ戦を挑む可能性があるとした。

 ただし、凄惨な市街戦が進む中、兄弟民族であるウクライナへの攻撃はロシア社会に反発が出ると予測。情報統制にもかかわらず、異例の反戦デモやオリガルヒの戦争反対アピールが行われたとし、「ロシア国内で大きな支持はない」と述べた。

 プーチン氏が核抑止部隊に特別警戒命令を出したことについては、ロシアの核ドクトリンが戦局転換や他国の介入阻止で核先制使用を認めていることに触れ、「限定的な核使用がないとは言えない」との認識を示した。この部分の予測は、外れてほしいところだ。


ゲスト / Guest

  • 小泉悠 / KOIZUMI Yu

    東京大学先端科学技術研究センター専任講師

研究テーマ:ウクライナ

研究会回数:2

ページのTOPへ