2022年03月18日 14:00 〜 15:30 10階ホール
「18歳成人と知的障がい者の『親なき後問題』」

会見メモ

 

知的・精神的障害者を子に持つ親にとって、親なき後の支援策となる成年後見制度にはさまざまな問題がある。司法書士法人ソレイユ代表司法書士の杉谷範子さん(写真左)、知的障害を持つ子の親であり、一般社団法人日本相続知財センター本部専務理事の鹿内幸四朗さんが、制度の問題点や支援策のあり方について話した。

 

司会 小林伸年 日本記者クラブ企画委員(時事通信)


会見リポート

親権喪失、親なき後に影響/後見制度の見直し必要

沼尻 知子 (読売新聞社社会保障部)

 4月から成人年齢が18歳に引き下げられる。会見は、親権が失われる時期が前倒しになることが、障害がある子の「親なき後問題」にどのような影響を与えるかを伝えた。

 親権とは、子どもの利益のために監護・教育を行ったり、子どもの財産を管理したりする権限や義務のことを言うとされる。親は、預貯金の管理や日常生活に必要な契約を子どもに変わって行っている。

 しかし、成人すると、親権は失われ、例えば、預金の契約、財産の相続などに本人が意志を示すことが必要になる。障害が重く、契約内容の理解や意志表示が難しい場合、成年後見制度の利用が必要になる。

 成年後見制度には、家庭裁判所が後見人を選ぶ「法定後見」と、あらかじめ自分で選ぶ「任意後見」がある。法定後見は親族が後見人になることを希望しても、選ばれると限らず、選定に不服申し立てはできない。

 ダウン症の娘を持つ鹿内さんは、「子どものことを理解しているのは親以外にいない」と、4年前、当時15歳の娘と、親を後見人とする任意後見契約を結んだ。子どもが未成年の間は、行為能力の有無にかかわらず、親権で任意後見契約を結ぶことができると考えた。

 しかし、子どもが成人後は、任意後見の意味を理解し、契約の意志を示せなければ、契約を結ぶことはできない。鹿内さんは「通常は子どもの成人は喜ばしいことだが、障害のある子の親にとっては子どもを守る権利を失うこと。守らないといけない子を守る権利を(成人後も)親に残してほしい」と訴えた。

 杉谷さんは、「高齢者と障害がある子どものための成年後見制度が同じように語られるのは違和感がある」と指摘。障害がある子が後見制度を利用した場合、月数万円の費用が長期間にわたってかかる負担の重さなどを課題にあげた。鹿内さんは「障がい者のための新たなルールが必要だ」と話した。


ゲスト / Guest

  • 杉谷範子 / Noriko Sugitani

    司法書士法人ソレイユ代表司法書士

  • 鹿内幸四朗 / Koshiro Shikanai

    一般社団法人日本相続知財センター本部専務理事

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