2022年02月07日 14:00 〜 15:30 10階ホール
「エリザベス女王の70年-21世紀のイギリス王室-」君塚直隆・関東学院大学教授 

会見メモ

英国のエリザベス女王が即位してから2月6日で70年を迎えた。

英国の象徴として戦後を生きてきたエリザベス女王の歩み、英国社会が変遷する中での英王室の生き残り戦略、国際関係において英王室が果たしてきた役割などについて関東学院大学の君塚直隆教授が話した。

君塚教授は、近現代イギリス政治外交史、ヨーロッパ国際政治史が専門。『立憲君主制の現在: 日本人は「象徴天皇」を維持できるか 』(新潮選書、2018年)で2018年のサントリー学芸賞を受賞した。欧州の皇室に関する著書多数。

3月20日には最新著『イギリスの歴史』が刊行される。

 

司会 大内佐紀 日本記者クラブ企画委員(読売新聞)


会見リポート

英女王、苦難乗り越え70年

植田 粧子 (共同通信社外信部次長)

 英国民から親しまれてきたエリザベス女王が2月6日、即位70年(プラチナ・ジュビリー)を迎えた。4月21日には96歳となり、存命中の世界の君主としては在位期間が最長で、最高齢。君塚氏によると、6月13日になるとタイの故プミポン国王の70年と126日を抜き、2024年5月29日まで健在なら、フランスのルイ14世の72年と110日の記録を更新して世界史上最長の君主になる。

 女王は「君臨すれども、統治せず」という立憲君主制の原則を守る一方、英国が経済難や欧州連合(EU)離脱、新型コロナウイルス禍などの危機に直面した際にはその絶大な信頼感と影響力を発揮。常に国民に寄り添いながら、安定と国民統合の象徴としての役割を果たしてきた。

 「70年間、順風満帆だったわけではない」。君塚氏はそう強調し、1997年8月のダイアナ元妃の事故死が試練の「最大のヤマ場」だったと指摘した。当初、女王は沈黙を守り、国民から厳しい批判を受けた。

 怒りの背景には、経済格差が広がる中、一般大衆の間で「置き去りにされた」と不満を感じている人が多くいたことがあったという。ダイアナ元妃の追悼に集まった人々の目には、元妃も同様に「置き去りにされた人」に映ったという解説は大変興味深いものだった。

 英王室は97年に公式サイトを開設し、女王らの活動を積極的に国民に伝え信頼回復に努めた。その成果があり、2002年の女王即位50年の祝賀行事は盛大に営まれた。

 女王にとってこの1年は最愛の夫フィリップ殿下の死、次男アンドルー王子のスキャンダル、孫のヘンリー王子夫妻との確執と、苦難の連続だった。それでも議会開会式でのスピーチをこなし、一時は体調を壊したものの変わらず公務に励んでいる。君塚氏は、6月の即位70年の祝賀行事は、コロナ禍で心身共に疲れ切っている国民を励ます、国民の快気祝いをかねたものなるだろうと指摘する。私事だが3月にロンドン支局に赴任するので、この盛大なイベントを現地で取材できると思うと今から胸が躍る。


ゲスト / Guest

  • 君塚直隆 / Naotaka Kimizuka

    関東学院大学教授 / Professor, Kanto Gakuin University

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