2022年03月28日 14:00 〜 15:30 10階ホール
「『サプライズなきサプライズ』――マクロン・プレジデンシーの二期目」吉田徹・同志社大学教授

会見メモ

フランス大統領選の第1回投票が4月10日に行われる。

比較政治・ヨーロッパ政治を専門とする吉田徹・同志社大学教授が「『サプライズなきサプライズ』--マクロン・プレジデンシーの二期目」と題し、選挙の構図、展望、二期目となるマクロン政権が直面する課題などについて話した。

 

司会 大内佐紀 日本記者クラブ企画委員(読売新聞)


会見リポート

アンチ・クライマックスの仏大統領選

鶴原 徹也 (読売新聞社編集委員)

 フランス政治の5年に1度の春の祭典であるべき大統領選挙が全く盛り上がらない。吉田教授は、39歳のマクロン大統領を誕生させた前回選挙と比べ、今回を「アンチ・クライマックス」と形容する。

 どういうことか。

 会見の副題が示すようにマクロン氏の再選は確実視されている。4月24日の決選投票で、前回同様に、極右候補のマリーヌ・ルペン氏との一騎打ちを制するはずだ。ロシアのウクライナ侵略戦略という欧州の危機は、現職に有利に働いている。

 ただ前回、言わば新星としてフランスを希望の光で照らしたマクロン氏は「上から目線」の言動も響き、瞬く間に人気を落とした。今、国民の6割が1期目の実績に不満を抱いている。

 にもかかわらず再選されるのは有力な対立候補がいないからだ。「前回は左派が総崩れした。今回は(戦後政治の主流だった右派)ドゴール派の総崩れが予想される」と吉田教授。つまり消去法の大統領選だ。フランスは既成の政党政治が崩れる一方、新たな政治の形を見いだしていない、混迷の時代にある。

 国民の気分も高まらない。政権や大統領職という既成制度に対する不信に加え、国民は倦怠感と警戒心を抱いている。今回、棄権率が初めて3割を超えるとの予測もある。

 吉田教授はマクロン氏の2期目の首尾を占う視点を幾つか示した。手つかずの年金制度改革と労働市場改革を実行できるのか、ドイツと肩を並べて欧州統合を強化・推進できるのか……。

 マクロン氏の2期目は危うさを内包しているように見える。それはマクロン氏が、吉田教授の表現を借りれば、「勝ち組のフランス」の代弁者であるからだ。「負け組のフランス」にも寄り添い、彼らの声を政策に反映できるのか。これも2期目を占う重要な視点だろう。


ゲスト / Guest

  • 吉田徹 / YOSHIDA Toru

    同志社大学教授 / professor, Doshisha University

研究テーマ:『サプライズなきサプライズ』――マクロン・プレジデンシーの二期目

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