2022年01月24日 13:00 〜 14:30 10階ホール
「ソ連崩壊30年」(2) 田中哲二・中央アジア・コーカサス研究所所長/袴田茂樹・青山学院大学名誉教授

会見メモ

旧ソ連を構成していた各国が独立後の30年間、どのような歩みを進めてきたのか。連邦崩壊が、地政学的にどんな変化と影響をもたらしているのか。

田中哲二・中央アジア・コーカサス研究所所長(写真左)、袴田茂樹・青山学院大学名誉教授が、ウクライナをめぐる欧米とロシアの対立やカザフスタンの政治変動など、最近の動きにも言及しながら考察した。

 

司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)

 


会見リポート

ウクライナ 日本にも試金石

渡辺 玲男 (北海道新聞社東京報道センター部次長)

 1991年のソ連崩壊から30年を経た今、旧ソ連圏の大国ウクライナやカザフスタンが揺れている。緊張が高まるロシアの隣国の現状や、影響力拡大を狙うプーチン政権の狙いを政治、経済両面から分析し、今後を展望した。

 ロシア政府は、欧米側が北大西洋条約機構(NATO)の東方不拡大の約束を破ったとして、ウクライナ周辺で軍事圧力を強め、米国などに安全保障上の保証を求めている。袴田氏はプーチン大統領らが繰り返すこの「約束」の存在について、ロシアのメディアや専門家の中にも「神話」だとして疑問視する声があることを紹介。ロシア側の主張をうのみにせず、客観的に見極める必要性を訴えた。

 2014年にロシアがウクライナ東部を「クリミア化」しなかったことについては「ウクライナを東西に分断すれば、西側がNATOに入ることを一番恐れた」と指摘。ウクライナ侵攻の実現性については、クリミア併合時のようにロシア国民が支持しない可能性があることなどを挙げ、慎重な見方を示したが、ロシアが国際法に反する行動を取った場合は日本政府に厳しい対応を取るよう求めた。

 クリミア併合に対し、当時の安倍晋三政権は北方領土交渉への影響を懸念し、欧米に比べ弱い制裁内容にとどめた。不法な占拠に日本が毅然と対応しなければ「北方領土問題でも主張する権利を失う」との袴田氏の主張は、対ロ交渉方針が判然としない岸田文雄政権への警鐘だろう。

 田中氏は中央アジア諸国について、経済的に中国型の移行経済が進む一方、政治的にはロシアの求心力が依然として強いと分析。年初に起きたカザフスタン騒乱の解決に、ロシア軍中心の平和維持部隊が初めて派遣されたことは、「中央アジアがロシアから離れられないことを示した」と語った。


ゲスト / Guest

  • 田中哲二 / TANAKA Tetsuji

    中央アジア・コーカサス研究所所長、中国研究所会長

  • 袴田茂樹 / HAKAMADA Shigeki

    青山学院大学名誉教授、新潟県立大学名誉教授 / professor, emeritus, Aoyama Gakuin University, University of Niigata Prefecture

研究テーマ:ソ連崩壊30年

研究会回数:2

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