会見リポート
2021年12月22日
16:00 〜 17:30
10階ホール
「ソ連崩壊30年」(1) 下斗米伸夫・法政大学名誉教授
会見メモ
下斗米伸夫名誉教授が、ソ連崩壊のプロセスとその後を振り返り、ロシアと周辺諸国の現状を分析した。
司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)
会見リポート
「ソ連好き」には至福の時間/紙面にぎわせた人物・事件次々と
松尾 圭介 ( 時事通信社外信部編集委員)
フルシチョフやブレジネフのいたソ連から、現在のプーチン政権のロシアまで、膨大な知識を駆使して流れを振り返った。かつて紙面をにぎわせた人物や事件が次々登場し、帝政ロシアまでさかのぼった解説があり「ソ連好き」にとっては至福の時間の記者会見となった。
1991年12月8日、当時のロシア、ウクライナ、ベラルーシの3首脳がポーランド国境に近いベラルーシ西部「ベロベーシの森」に集まって「ソ連の消滅」を決めた。なぜ、この場所だったのか。3人そろってポーランドへ「もしゴルバチョフが本当に逮捕に来たら逃げられるように」と言われていたと紹介され、会見場は笑顔に包まれた。
同じベラルーシ西部の森では今、「欧州へ移住できる」とだまされた大勢のクルド人らが集まっている。30年の変化を実感する。
ロシアが今、怒りを隠さなくなった北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大についても「西側のメディアだけを読んでいると、よく見えないところがたくさんある」と指摘された。わが身の30年を振り返って思い当たるところが幾つもある。
今のウクライナ問題に直接つながる2014年2月。ウクライナの首都キエフの広場で起きた発砲では、大勢の人が亡くなった。ただ、誰が撃ったのか、真相は薮の中だ。
ヤヌコビッチ政権の発砲なら話は単純だが、反ヤヌコビッチ派の「スナイパー部隊が射撃した」と「ついこの間の9月の研究大会で報告が出ている」と紹介された。「こういう報告は、なかなか西側のメディアでは出てこない。正確に言うと、英BBCとか独シュピーゲルとか、よく読んでみると半年遅れくらいで正しいことが出たりする」と指摘され、耳の痛い話だが、その通りだ。
大騒ぎの大量報道が収まると、次の話題に移ってしまって、なかなか立ち戻る機会はやってこない。ソ連がなくなり30年たっても、これは変わらない。あの時のあの話は、もっと調べられるのではないか、振り返る謙虚な姿勢が大切だ。
ゲスト / Guest
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下斗米伸夫 / Nobuo Shimotomai
法政大学名誉教授、神奈川大学特別招聘教授
研究テーマ:ソ連崩壊30年
研究会回数:1