2021年12月10日 14:30 〜 16:00 10階ホール
「アフガニスタン」(7) 青木健太・中東調査会研究員

会見メモ

アフガニスタンでタリバンが実権を握って4カ月を迎える。

中東調査会の青木健太研究員が現状と課題、日本との関わりについて分析した。

青木さんは2009年から11年までアフガニスタン地方復興開発省のアドバイザーを務めるなど現地経験が豊富で、多くの論考を発表している。

 

司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)


会見リポート

「包摂的」な政府生まれず、国際承認は遠い

平田 篤央 (朝日新聞社論説委員)

 アフガニスタンでイスラム主義勢力タリバンが権力を握ってから約4カ月がたった。経済の混乱や食糧不足が解消されないまま厳冬期に入り、深刻な人道危機が懸念される。しかし、国際社会はタリバンとどう向き合うのか決めかねている。その現状について、青木さんは研究者の立場から、歴史的な背景をふまえて解説した。

 王政のもとで安定していたアフガニスタンは1973年のクーデター、その後の共産主義革命、旧ソ連の軍事侵攻と混乱の時代をむかえる。イスラム聖戦士(ムジャーヒディーン)によるジハードで旧ソ連は撤退するが、その後は軍閥同士の権力争いで内戦に陥る。

 青木さんは、92年から94年は暗黒時代だったという。暴行、強姦、金品の巻き上げなどが横行する無法地帯だった。そこで世直し運動として生まれたのがイスラム神学校の学生らでつくるタリバンだった。

 96年にタリバンはほぼ全土を制圧する。そのとき、アフガン社会は20年にわたる戦乱でテクノクラートの多くは海外に避難していた。社会を一枚の布に例えれば、縦糸、横糸が寸断された状態だった。

 タリバンの政策を擁護はできないが、歴史的な文脈を無視して善悪二元論でタリバンを語るのは一面的だ。青木さんは、そう指摘する。

 タリバンが復権して崩壊させた共和政権が元軍閥らで構成されていたことを考えれば、旧政権の有力者に権力を分け与える可能性は低い。

 当面、タリバンに軍事的に対抗できる勢力はなく、その統治が続く見通しだ。一方で、各国が求める「包摂的」で人権など普遍的な価値を重んじる政府は生まれず、国際的な承認は難しい。

 膠着した状況は当面変わらないというのが青木さんの分析だ。深まる人道危機にどう対応するか。国際社会の苦悩は続きそうだ。


ゲスト / Guest

  • 青木健太 / Kenta Aoki

    中東調査会研究員 / Research Fellow, The Middle East Institute of Japan

研究テーマ:アフガニスタン

研究会回数:7

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