2022年03月11日 15:00 〜 16:30 10階ホール
「韓国大統領選を読む」(4) 西野純也・慶應義塾大学教授

会見メモ

3月9日に第20代韓国大統領選挙の投開票が行われ、大接戦の末、保守系最大野党「国民の力」の尹錫悦(ユンソクヨル)前検事総長が当選した。

現代朝鮮政治、日韓関係を専門とする慶應義塾大学の西野純也教授が登壇。選挙結果から見えたいまの韓国社会を解説するとともに、内政、外交安保政策を巡る課題、日本はどう向き合うべきかなどについて話した。

 

司会 澤田克己 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)


会見リポート

日韓関係改善に向け仕込みは今すぐに

佐々木 真 (時事通信社解説委員)

 5年ぶりの韓国大統領選挙。0.73ポイント差という超僅差はなぜ起きたのか。保守政権の復活で日韓関係をはじめとした韓国外交はどう変わるのか。湧き上がる疑問に、朝鮮半島問題の専門家、西野純也・慶大教授が答えてくれた。

 西野教授は「選挙の結果が今の韓国の状況をよく見せてくれた」として、韓国社会の深刻な分極化を指摘。分断が複合化したと分析して、理念、地域、世代、ジェンダーの対立を挙げた。特に20代で男女の投票先が対称的だったことを強調した。

 尹錫悦氏は当選後、分裂している国民の「統合」を目指す考えを示したが、西野氏は歴代当選者が同じ主張をしてきたとして、実現するか疑問符をつけた。

 新政権の外交政策については、「自由民主主義連帯」を重視して、文在寅政権の南北関係中心から、世界への貢献を重視するスタイルにシフトすると展望。米国に対しては軍事にとどまらない技術やサイバー分野などを含む包括的な戦略同盟に進むとみる。一方、対北朝鮮関係では対話より抑止に重点を置き、対中関係では中国が嫌う高高度防衛ミサイル(THAAD)の追加配備などを公約していると説明した。

 しかし、新政権が両国に対して、このような強硬路線を取れば、強い反発を受けるのは必至。西野氏は公約通り行うか見守る考えを示した。

 厳しい状態にある対日関係について、尹氏は改善に意欲を見せている。西野氏は尹氏が提案している一括妥結方式を「現実的なアプローチ」と評価した。

 当選後すぐに岸田文雄首相は祝電を送り、電話会談も実現した。西野氏は「スタートは良い」としたが、双方の国内政治への考慮や自国の夏の選挙を優先する姿勢が関係改善機運を逃してしまうのではないかと懸念する。そこで、「本当に困難な課題を解決するのは夏以降になるにしても、そのための仕込み作業は今すぐ始める必要がある」と訴えた。


ゲスト / Guest

  • 西野純也 / Junya Nishino

    慶應義塾大学教授、東アジア研究所現代韓国研究センター長 / professor, Keio University

研究テーマ:韓国大統領選を読む

研究会回数:4

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