2022年01月26日 14:00 〜 15:30 10階ホール
「2022年経済見通し」(5) 柯隆・東京財団政策研究所主席研究員

会見メモ

東京財団の柯隆主席研究員に、中国経済の見通しを聞いた。

 

司会 播摩卓士 日本記者クラブ企画委員


会見リポート

中国、不確実性高く政策混乱

村上 太輝夫 (朝日新聞社オピニオン編集部解説面編集長)

 中国経済を巡る議論は楽観と悲観、あるいは脅威論や衰退論が交錯する。柯隆さんの話はやや悲観的なのだが、それは本来あるべき方向性を定め、丁寧に観察して導いているため、ぶれず、説得力がある。

 柯さんが注目するのは最近の利下げだ。中国の国有銀行は利ざやで稼ぐため本来利下げは避けたい。それだけに、この措置は中国人民銀行の景気認識の厳しさを示すという。今年の見通しは「不確実性が高い」。共産党大会を秋に控える今年はある程度の成長を求めたいところ、新型コロナがいつ終息するかわからない難しさを抱えているとの指摘だ。

 会見では「政策立案に混乱がある」という見方も印象的だった。例えば昨年、豪州との対立で石炭輸入を止めたために大規模停電を引き起こしたこと。また、成長の牽引役であるテック企業を抑え付けていること。不動産投資を巡る問題への対応にも混乱がみられるという。

 総じていえば「自由な市場経済よりも、より統制的な方へと後退している」との見立てだ。

 こうした柯さんの議論は、もともと中国経済の舵取りをしてきた改革派の発想と通底する。振り返れば2001年に世界貿易機関に加盟したころは、中国でいかにしてまともな市場経済を根付かせるかについて官僚や専門家が熱心に語っていたものだ。「正論が指導者の耳に届いているのか」と心配する柯さん自身もまた、彼ら改革派の面々を思い浮かべているのではないかと勝手ながら想像している。

 日本に対しての助言も厳しい。国際社会でルールが機能せず、リーダー役不在の乱世にあって、求められるのは戦略だ。それが日本には欠如しているのではないか、と。「羅針盤のない船に乗っている感じがする」。おっしゃるとおり。この場を借りて昨年出版された著書『「ネオ・チャイナリスク」研究』の一読もお勧めする。


ゲスト / Guest

  • 柯隆 / Ke Long

    東京財団政策研究所主席研究員 / Senior Fellow, The Tokyo Foundation for Policy Research

研究テーマ:2022年経済見通し

研究会回数:5

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