2022年01月14日 14:00 〜 15:30 10階ホール
「2022年経済見通し」(1) ジョセフ・クラフト ロールシャッハ・アドバイザリー代表取締役

会見メモ

ロールシャッハ・アドバイザリーのジョセフ・クラフト代表取締役が、バイデン政権の政策、中間選挙に向けた課題、米国経済などについて話した。

クラフトさんはモルガン・スタンレーマネージングディレクター、ドレスナー・クラインオート証券東京支店キャピタル・マーケッツ本部長、バンク・オブ・アメリカ東京支店副支店長などを経て2015年から現職。

 

司会 小竹洋之 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)


会見リポート

インフレ 米中間選挙に影

松本 健太朗 (読売新聞社経済部)

 米銀幹部などを歴任したロールシャッハ・アドバイザリーのジョセフ・クラフト氏は「米国の政治を理解していないと経済情勢は見通せない」と、政局や金融政策について日米の政府高官との意見交換を重ねた成果を惜しみなく披露した。

 米国は昨年12月の消費者物価指数(CPI)上昇率が前年同月比7・0%と約39年半ぶりの高水準となっている。各種世論調査で物価上昇(インフレ)への懸念が最も高いという結果を紹介し、バイデン政権の支持率低下の要因は高止まりするインフレだと指摘する。このことに気づいたバイデン政権から米連邦準備制度理事会(FRB)に対し、「インフレ対策への圧力があった」と明らかにする。インフレの影響は行方が注目される今年11月の中間選挙にも及ぶという。民主党地盤の西海岸などに比べ接戦州の中部は港からの輸送費がかかる分、インフレ率が高く、「民主党は不利。インフレ率が選挙のポイントになっている」と分析する。

 急速な金融引き締めに舵を切るFRBは量的緩和を縮小するテーパリングの開始を昨年11月に決定し、今年3月に終え、利上げに踏み切るとみられている。インフレの原因はコロナ禍からの経済正常化を進めたことで、需要が回復する一方、人手不足で物流が追いつかず供給が不足していることが一因だ。「引き締めは供給不足には効かない。需要が一気に落ちると不況に入るリスクがある」と懸念を示した。

 日本については岸田政権の高官から「円安を是正できないか」と相談されるという。米国で利上げが進むと、日米の金利差が開き、円安ドル高に振れやすくなる。輸入物価が上昇し、可処分所得が目減りするためだと推測する。対中関係では、米国が人権問題や経済安全保障の観点から輸出規制を強めようとしていると見通す。日本企業は人権問題に甘いとみられており、制裁対象に加えられかねないと警鐘を鳴らした。


ゲスト / Guest

  • ジョセフ・クラフト / Joseph Kraft

    ロールシャッハ・アドバイザリー代表取締役、経済アナリスト

研究テーマ:2022年経済見通し

研究会回数:1

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