2021年11月24日 14:00 〜 15:30 10階ホール
「ジェンダーと教育・研究」(1) 佐々木成江・名古屋大学大学院准教授

会見メモ

名古屋大学大学院の佐々木成江准教授が、研究・教育現場におけるジェンダーギャップの現状やその背景、是正に向け必要となる方策について話した。

 

司会 黒沢大陸 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞)


会見リポート

女性研究者増 米並みへ50年

中村 奈都子 (日本経済新聞社編集委員)

 ジェンダード・イノベーションズが欧米で注目されている。これまで男性中心に研究されてきた医療や製品・技術開発について、性差(生物学的・社会学的)に着目しイノベーションにつなげる考え方だ。

 例えば医療の分野では、同じ薬でも男女で効果が真逆になる場合がある。工学分野では顔認識や音声認識で女性の方が誤認識されやすいのが現状だ。研究・開発に多様な視点を入れることでイノベーションが生まれるとして、海外では研究助成金の要件に性差・ジェンダーの統計と解析を求める動きがでている。

 佐々木准教授はジェンダー多様性による科学技術への効果を説明した上で、海外に比べて女性研究者が少ない日本の現状を危惧する。研究者に占める女性の割合はOECDで最下位。このままの増加ペースでは今の米国並みになるまでに50年かかると予測する。特に理工学系は学部段階から女性が少ない。理由は様々だが、「女子は数学が苦手」といったステレオタイプ(固定概念)の影響は決して小さくない。

 分野を問わず、研究員から教員に進む段階で女性割合は激減する。背景の1つに30~40代での出産・育児に伴う昇進の遅れがある。例えば若手枠の研究費申請では「40歳未満」などの年齢上限があり、申請段階で女性の割合が低くなる。「せっかくの研究がわずか10年程度の育児のために先へ進めないのはもったいない。年齢制限を見直すことで、新たな経費負担なく女性割合を上げ、研究力を高めることが期待できる」と強調する。

 佐々木准教授が所属する名古屋大学では、保育所や学童保育の整備、女性リーダー育成プログラムの実施、17時以降の会議の見直しなどを通じて女性研究者を増やしてきた。こうした取り組みは女性だけで進められるものではない。男性も含め全員で取り組むことが競争力につながると改めて感じた。


ゲスト / Guest

  • 佐々木成江 / Narie Sasaki

    名古屋大学大学院准教授 / Associate Professor ,Nagoya University

研究テーマ:ジェンダーと教育・研究

研究会回数:1

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