2021年11月09日 13:00 〜 14:00 9階会見場
「こども庁議論への緊急提言」会見

会見メモ

子育ての現状に危機感を持つ有志が、こども庁創設に関して緊急提言をまとめた。

「子どもと家族のための緊急提言プロジェクト」共同代表の堀田力・さわやか福祉財団会長(写真左)と佐藤拓代・全国妊娠SOSネットワーク代表理事(写真左から2枚目)、中嶋圭子・事務局政策担当(日本ケアラー連盟理事=写真左から3枚目)が、とりまとめの経緯、提言の内容について話した。

 

司会 辻本浩子 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)


会見リポート

支援と財源セットで本気の議論を

香髙 重美 (共同通信社生活報道部長)

 「ビジョン」が見えないことへのいら立ちが緊急提言の背景のようだ。「こども庁」創設の議論が本格化しつつあるが〝形〟先行の現状に有識者らが苦言を呈した。「『縦割り』の課題をいくつか束ねただけでの行政組織では、問題は解決しない。支援と財源をセットにした、子育てのパラダイム転換を図るような本気の議論が必要だ」と訴えた。

 提言のポイントは5つ。まず安心して子どもを産む環境を確立するために、出産一時金の増額や出産前後の健診の医療保険適用などを求めた。第2は、「ゼロ日死亡」という、産後すぐの虐待やネグレクトにより幼い命が奪われる悲劇を防止する取り組みだ。妊娠した女性全員への1対1の専門家による伴走型支援を訴えた。

 家庭の孤立を避けるため、すべての子どもへの「保育保障」の必要性を強調。親の就労の有無が保育園入園の可否に影響する現状に対し、見直しを迫った。省庁再編では、家族支援を含めた「子ども家庭省」新設が必要とした。若者にも多くの財源を振り向ける「全世代型社会保障」改革の加速を訴え、子ども予算のGDP3%への引き上げを求めた。

 根底にあるのは「子どもとその家庭は社会で支える」との思いだ。一部に根強い、家庭の責任に重きを置く「伝統的な家族観」の人々とは異なる主張だ。コロナ下では、就労が不安定になったり、家庭以外に行き場がなくなったりしたことで、DVや児童虐待が増えたとされる。会見では、子どもと家庭を土台から支える仕組みがあれば、重大事案を予防できると強調した。

 印象に残ったのは、共同代表の堀田力さわやか福祉財団会長の発言だ。「日本の子どもは元気がない」―。うなずく人は多いだろう。再編議論を機に、大人を含めた社会のあり方を問い直し、未来を託す子どもについて、ゼロベースの意見交換が広がることを期待したい。


ゲスト / Guest

  • 堀田力

    「子どもと家族のための緊急提言プロジェクト」共同代表

  • 佐藤拓代

    「子どもと家族のための緊急提言プロジェクト」共同代表

  • 中嶋圭子

    「子どもと家族のための緊急提言プロジェクト」事務局政策担当

研究テーマ:こども庁議論への緊急提言

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