会見リポート
2021年10月21日
14:00 〜 15:00
10階ホール
「アフガニスタン」(5) 国境なき医師団看護師 白川優子さん
会見メモ
国境なき医師団の看護師、白川優子さんはタリバンがアフガニスタンの首都カブールを制圧した直後の8月26日から5週間にわたりアフガニスタン南部に位置するヘルマンド州の州都ラシュカルガで医療活動を行った。
10月5日に帰国、自主隔離期間を終えたばかりの白川さんが現地の状況について報告した。
司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)
会見リポート
患者殺到、国際支援の継続を
笠原 真 (朝日新聞社国際報道部)
イスラム主義勢力タリバンが首都カブールを制圧してからわずか11日後。8月26日に国境なき医師団(MSF)の看護師、白川優子さんはアフガニスタンに入った。シリアやイエメンなど、世界中の紛争地で活動してきたが、今回の派遣は2018年以来3年ぶりだった。
活動場所のヘルマンド州ラシュカルガに入り、まず目にしたのは「人々の日常」。市民が買い物をし、子どもたちが遊んでいた。女性がブルカで顔を覆い隠すことなく、一人で道を歩く姿もあった。
職場の州立ブースト病院は人口130万人を擁する地域の基幹病院。働く職員は800人に上る。戦闘が終わり、人々が病院にアクセスしやすくなったこと、そして国際援助が止まり、多くの病院が運営停止に追い込まれたことで、ブースト病院には患者が殺到していた。
「多い日には24時間で800人以上の患者が来て、300床ある入院病棟は常に満床だった」。呼吸器疾患などを患う子どもが栄養失調になり、複合的な要因で毎日のように亡くなっていった。白川さんは「アフガニスタンへの国際支援の継続が必要だ」と繰り返し強調した。
院内の手術室を運営する管理職として、看護師や清掃員ら約50人の現地スタッフを統括した。スタッフたちはみんな明るくまじめ。だが8月までラシュカルガでも続いた戦闘で、家を壊されたり、物を奪われたりした人もいた。彼らの笑顔の裏には苦しみがあることを知り、「胸が張り裂けそうになった」。
当初、派遣の打診を受けた際は戸惑ったという。現在はMSFの日本事務局で働き、日本での平和な生活から離れたくないとの思いがあった。だが実際に現地に入ると、頻繁に紛争地に行っていた以前の自分がよみがえってきた。5週間を過ごし、困難な現場でも真摯に医療に取り組む仲間にも出会えた。白川さんは「本当に行ってよかった」と振り返った。
ゲスト / Guest
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白川優子 / Yuko Shirakawa
国境なき医師団看護師
研究テーマ:アフガニスタン
研究会回数:5