2021年11月09日 15:30 〜 17:00 10階ホール
独のインド太平洋戦略

会見メモ

ドイツのフリゲート艦「バイエルン」が11月5日、東京に寄港した。

ドイツは2020年9月にインド太平洋戦略についての指針を決定、日本などとの関係強化を進めており、今回の派遣もこの一環。フリゲート艦をインド太平洋地域に派遣するのは約20年ぶりとなる。

クレーメンス・フォン・ゲッツェ駐日大使(写真左)、カイ=アヒム・シェーンバッハ海軍総監(写真左から2枚目)、「バイエルン」の艦長を務めるティロ・カルスキ海軍中佐(写真左から3枚目)が今回の派遣の意義などについて話した。

 

司会 大内佐紀 日本記者クラブ企画委員(読売新聞)

通訳 青山彌紀、ハシュケ暁子(いずれもドイツ大使館)

 

■カイ=アヒム・シェーンバッハ海軍総監CV(英語)

■ティロ・カルスキ海軍中佐(「バイエルン艦長」)CV(英語)

■クレーメンス・フォン・ゲッツェ駐日大使CV(日本語)

 


会見リポート

2~3年おき、フリゲート艦派遣

藤川 大樹 (東京新聞外報部)

 ドイツ海軍のフリゲート艦「バイエルン」のインド太平洋地域への派遣に合わせ、同海軍トップのカイアヒム・シェーンバッハ総監らが記者会見に臨んだ。「ルールに基づいた国際秩序と海上航行の自由を守る」と繰り返し、地域の安定への貢献を約束した。名指しこそ避けたが、東・南シナ海で軍事的な圧力を強める中国が念頭にあるのは明らかだろう。

 ドイツは昨年9月、インド太平洋ガイドライン(指針)を策定した。バイエルンの派遣は「この指針を、目に見える形で示す意図がある」という。ドイツ軍艦艇の日本寄港は2002年以来、実に19年ぶりとなった。

 ドイツは、英国やフランスと違い、インド太平洋地域に領土を持たない。ただ、ドイツの貿易の20%以上がこの地域との間で行われ、貿易額は過去15年間でほぼ倍増した。「ドイツにとっても非常に重要な地域で、我々の国益とも関連する」とクレーメンス・フォン・ゲッツェ駐日大使。ひとたび海上交通路に障害が起きれば、物資の供給に深刻な影響を及ぼしかねない。

 インド太平洋地域には、北朝鮮の核・弾道ミサイル開発計画や未解決の領土紛争など安全保障上のリスクが存在する。シェーンバッハ氏は地域の安定に向け、今後も2~3年おきにフリゲート艦を派遣したり、英仏が派遣する船団に加わったりする考えを披露。日本を筆頭に、豪州や韓国、シンガポール、ニュージーランドなどの名前を挙げ「安全保障分野での関係を深めたい」と語った。

 バイエルンの来訪に先立つ9月には、英海軍の最新鋭空母「クイーン・エリザベス」を中核とする空母打撃群がインド太平洋地域に展開。米国、英国、豪州による新たな安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」も誕生した。「インド太平洋地域は欧州全体にとって重要性が増している」。インド太平洋時代の幕開けを、肌で感じる会見だった。


ゲスト / Guest

  • カイ=アヒム・シェーンバッハ / Kay-Achim Schönbach

    ドイツ

    ドイツ海軍総監 / Chief of the German Navy

  • ティロ・カルスキ / Tilo Kalski, M.A.

    ドイツ

    ドイツ海軍中佐、フリゲート艦「バイエルン」艦長 / Commanding Officer, frigate FGS “Bayern”

  • クレーメンス・フォン・ゲッツェ / Dr. Clemens von Goetze

    ドイツ

    駐日ドイツ大使 / ambassador to Japan, Germany

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