2021年10月22日 16:00 〜 17:30 10階ホール
「脱炭素社会」(2) 田村堅太郎・地球環境戦略研究機関(IGES)プログラムディレクター

会見メモ

 地球環境戦略研究機関(IGES)の田村堅太郎プログラムディレクターが、気候変動の基礎から解説した。田村さんは「この10年の取り組みが重要になる」と強調。各国が対策の引き上げに動いていることを評価しつつも「『1.5度目標』の達成には不十分」。グレタ・トゥーンベリさんの言葉を引用し「希望を語るだけでなく、排出削減の具体的な行動を!」と訴えた。

田村さんは10月31日に英国で開幕する国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)への期待や注目点についても言及した。

 

司会 江木慎吾 日本記者クラブ専務理事兼事務局長

 


会見リポート

決定的な10年、脱炭素に邁進を

服部 慎也 (共同通信社科学部)

 「2020年代は、私たちが安定した社会を継続できるかどうかを左右する決定的な10年」。国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)の開催を1週間後に控え、パリ協定に沿った対策の重要性を強調した。

 パリ協定は産業革命前と比べた地球の平均気温の上昇を1.5度未満に抑えることを努力目標とする。気温は既に約1度上昇。「CO₂を出せば出すほど気温は上がっていく。止めたければ排出量を実質ゼロにしなければならない」。温度目標ごとに許容される温室効果ガスの排出量「カーボンバジェット」を考慮すると、排出を低下に向かわせる時期も重要だ。「20年代に低下に向かわせ、30年には大幅削減しないと1.5度目標の経路には乗らない」。将来の技術革新を待っていては間に合わない。

 脱炭素化にどう向き合うか。具体的な手段として①エネルギー消費の削減、②電化の促進、③エネルギーの脱炭素化、を挙げた。再生可能エネルギーの導入が進む中、足かせとなるのが石炭火力発電だ。国際エネルギー機関は脱炭素社会に向け毎年平均90ギガワットを廃止していく道筋を描く。これは日本の全石炭火力の倍の規模という。だが現状は逆行。「世界では500ギガワット規模の石炭火力が運転開始を控えており、非常に懸念される」。日本もエネルギー基本計画で、30年度の電源の約2割を石炭火力に頼ることを決めたばかりで、大きな課題を残したままだ。

 ここ数年、日本を含め各国が新しい削減目標を表明。それでも国連の報告書によると、1.5度目標にはまだ届かない。「最初のCOPから30年近くたって、相変わらず世界の排出量は増えている。今求められるのは希望を語ることではなく、具体的な行動だ」。スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんの言葉を引用し、「決定的な10年」の最初のCOPに期待を寄せた。


ゲスト / Guest

  • 田村堅太郎 / Kentaro TAMURA

    地球環境戦略研究機関(IGES)気候変動とエネルギー領域プログラムディレクター / Director of Climate and Energy Area Institute for Global Environmental Strategies (IGES)

研究テーマ:脱炭素社会

研究会回数:2

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