会見リポート
2021年11月12日
14:00 〜 15:30
10階ホール
「新型コロナウイルス」(77) 横大道聡・慶應義塾大学大学院教授
会見メモ
憲法学者の横大道聡・慶應義塾大学大学院教授がコロナ禍で政府が講じてきた対策の特徴や問題点を憲法の観点から解説した。
司会 坪井ゆづる 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞)
会見リポート
施策の法的根拠 置きざりに
西條 高生 (共同通信社会部担当部長)
日本の新型コロナウイルス対策を特徴づけるものは何か。それが「法治主義」の欠如であることを再認識させられた。法律専門家として政府の施策を読み解き、発信してきた横大道教授の話は分かりやすく、示唆に富んでいた。
政府は飲食店への営業規制を感染抑止策の柱に位置付けてきた。一方、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発令・解除を繰り返す中で、個別の施策に「明確な法的根拠はあるのか」という根源的な問いはおろそかにされてきた。典型例は、まん延防止措置としての酒類の提供停止要請だ。居酒屋やバーにとっては事実上の休業要請として機能し、宣言下でなければ休業要請はできないとしてきた政府の見解と矛盾する。いまだに説得力のある説明は聞かれない。
横大道氏は、要請に従わない業者への制裁的な命令、風営法や食品衛生法を使った感染症対策の指導なども含め「法律の拡張的な活用」と指摘。さらに都道府県独自の「緊急事態宣言」や全国一斉の休校要請には法的根拠がなかったと断じた。それでも政府を批判する声が強まることはなく、むしろ同調圧力を利用した「お願いベース」の対策を評価する声すら上がった。自戒を込め、メディアにも大きな責任があったことは否定できない。
緊急時にこそ必要とされる「法の支配」が、日本ではなぜ軽視されるのか。横大道氏は出席者の質問に「為政者の法に対する扱いの軽さがそういう文化を生んだのか。国民が重視しないから政権の座にいられるのか。両にらみで是正する必要がある」と答えた。
このほか、話題は「公共の福祉」の考え方といった憲法上の重要な問題にも及んだ。紙幅の関係で割愛せざるを得ず、日本記者クラブのホームページにアップされた動画を一人でも多くの人が視聴することを願ってやまない。
ゲスト / Guest
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横大道聡 / Satoshi Yokodaido
慶應義塾大学大学院法務研究科(法科大学院)教授 / Professor, Keio University Law School
研究テーマ:新型コロナウイルス
研究会回数:77