会見リポート
2022年01月21日
13:30 〜 15:00
10階ホール
「2022年経済見通し」(4) 小林真一郎・三菱UFJリサーチ&コンサルティング主席研究員
会見メモ
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎主任研究員に、雇用と賃金について聞いた。
景気全体の分析や雇用情勢の細部の分析をまじえ、雇用は緩やかな改善、賃金は緩やかに上昇、と話した。
司会 竹田忠 日本記者クラブ企画委員(NHK)
会見リポート
成長戦略 明確に示せるか
平田 弓月 (共同通信社経済部)
どうすれば賃金は上がるのか―。バブル経済崩壊後、物価変動を加味した日本の平均実質賃金は低迷が続いている。「失われた30年」の中心命題の一つだ。小林真一郎氏はこの難題に明快な処方箋を示し、日本の針路を考える上で重要な視座となった。
手始めに最近の経済情勢を紹介し新型コロナウイルスのショックから景気は一時急速に冷え込んだが「昨年秋以降は回復軌道」と指摘。オミクロン株の影響や物価高を警戒しつつ「昨年冬のボーナスはほぼ下げ止まり、今年の夏冬はプラスになってくる」と所得環境を見通した。
多くの業種で人手不足感が強く、春闘も「前年実績を上回る2%程度の賃上げ率」を想定。しかし、こうした流れは短期の話で岸田政権が目指す「成長と分配の好循環」には「状況はそんなに甘くない。好循環というほどの勢いはない」と冷静だ。
そこで「なぜ企業は賃金を上げなかったのか」を過去から読み解く。バブル崩壊で企業は利益が急減し、上昇していた固定費の賃金は重荷となり「痛い目に遭ったという教訓がある」。業績回復後も内部留保(直近で484兆円)は拡大し「現預金も積み上がり、使い道がないお金がどんどん増えている状況」と嘆く。
さらに経営者心理を「今後業容が拡大していく確実なめどが立たなければ、すなわち期待成長率が高まってこなければ簡単に賃金を引き上げるのは難しいと相変わらず考えている」と解説。期待成長率は1%程度との内閣府調査を引用し「企業の胸の内はほぼゼロに近い」と語った。
解決策はあるのか。「一つ目は政府がしっかりとした日本の将来ビジョンを示せるかどうかだ」と成長戦略や規制改革の推進を訴えた。「二つ目は企業の不安を取り除くこと」。最大の不安は国内の需要縮小で、少子高齢化対策や財政再建など課題は山積みだ。春闘まっただ中、日本が大変な分岐点にあると痛感した。
ゲスト / Guest
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小林真一郎 / Shinichiro Kobayashi
三菱UFJリサーチ&コンサルティング主席研究員 / Mitsubishi UFJ Research & Consulting Co.,Ltd.
研究テーマ:2022年経済見通し
研究会回数:4