2021年10月22日 14:00 〜 15:00 10階ホール
石倉洋子・デジタル監 会見

会見メモ

石倉洋子・デジタル監が、デジタル庁が当面取り組むべき課題や果たすべき役割について話した。

 

司会 小竹洋之 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)


会見リポート

官僚に欠ける「顧客志向」/根本突き詰めぬ姿勢が課題

八十島 綾平 (日本経済新聞社デジタル政策エディター)

 デジタル庁の発足から約2カ月。事務方トップの石倉洋子デジタル監には「官」を革新することの難しさや課題が見えてきているようだ。これまでの日本政府には、顧客志向が欠けていて「ユーザーとは誰か? どういう事をしてあげれば良いのか?といったことをあまり考えてこなかった」という。

 だからユーザー・エクスペリエンス(UX、顧客体験)が大切と言われても「それがどういう事か分からない」し、「国民とは誰なのか? このサービスは誰のためにあるのか?」という問いにも明確な答えを出せなかったのだという。

 石倉さんは、根本的なところを突き詰めないまま次々と政策を打ち出す官のあり方に問題意識を持っているようだった。マイナンバーカードの普及が思うように進まないことへの対応も「『なぜそうなのか?』を考えることより『こういう事をやった方がいい』にどんどん行っちゃう」と厳しい。確かにカードの使途は保険証やハローワークなど次々と広がるが、私たち国民の需要のど真ん中に球を投げられている感覚は乏しい。

 課題は官だけでなく、日本社会全体にも通じるところがある。日本人は総じて「ハウツーが好き」で思考が「いきなりボーンと飛んじゃう」傾向があるという。例えば日本の女性活躍議論も、革新を生む組織になるには人材の多様性が必要であるといった「『それによって何をしようか』がないとうまくいかない」と映るようだ。

 デジタル庁が掲げる「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」というスローガンについては「本当にそれでいいのかという気がしないでもない」という本音も漏れた。石倉さんが向き合うべきは、官にとどまらない日本社会全体の旧弊・悪弊だ。言葉の端々に示された日本への違和感をどうか持ち続けてほしい。そう思わせる会見だった。


ゲスト / Guest

  • 石倉洋子 / Yoko Ishikura

    デジタル監 / Chief Digital Officer, Digital Agency

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