会見リポート
2022年01月19日
14:00 〜 15:30
10階ホール
「2022年経済見通し」(2) 白井さゆり・慶應義塾大学教授
会見メモ
慶應義塾大学の白井さゆり教授が、米国、中国を中心とした世界経済の見通しと課題について話した。
白井さんは国際経済学、マクロ経済学、アジア経済論、通貨政策が専門。2011年から16年まで日本銀行政策委員会審議委員。
司会 播摩卓士 日本記者クラブ企画委員(TBS)
会見リポート
世界の課題と米中の行方
北村 美紀 (テレビ朝日経済部長)
今年の経済見通しについて米中を切り口にダイナミックかつ歯切れよく語る白井氏の分析に、視界のモヤが少し晴れたような気がした。
白井氏はまず、世界経済が直面する「3つのチャレンジ」を指摘した。1つ目は景気回復が加速する国と鈍化するアメリカ・中国など、各国の経済成長のばらつきだ。2つ目は主要中央銀行の金融政策のばらつき。世界的にインフレ圧力が強まる中、今年利上げが予想されるアメリカの影響を大きく受ける年になりそうだ。そして3つ目が地政学的リスクの高まり。中国と西側諸国のデカップリングが加速し、日本はますます難しい立ち位置を強いられることになる。
中国経済については2015年以降の政策転換を中心に分析が行われた。実は中国経済の国際化は貿易以外ではあまり進んでおらず、国有企業の存在感が増しているという。興味深かったのは、中高所得世帯数が中国の方がアメリカよりも多く、この世帯数の増加見通しもアメリカを凌駕しているという指摘。ゼロコロナ政策や人権問題など、投資リスクが高い一方、金融市場の圧倒的な成長力は海外の投資家の関心を集め続けるだろうとのことだった。
最後に世界が影響を受ける米国経済について分析した。注目すべきは高まるインフレ圧力とそれに対する金融政策だ。今般のインフレは過去のものと全く違うと白井氏は指摘する。サービス価格ではなくモノの価格が上がっている。これが物流の停滞と人手不足、エネルギー価格の上昇と重なって、予想外に長引いていることが問題だとした。11月の中間選挙を控えFRBは過去に経験のない早いペースでの資産縮小を実施する見通しで、長期金利の上昇により不動産やITなど株価が下押しされる産業が出てくるだろうとのことだった。
ゲスト / Guest
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白井さゆり / Sayuri Shirai
慶應義塾大学教授 / professor, Keio University
研究テーマ:2022年経済見通し
研究会回数:2