2021年09月30日 13:30 〜 15:00 オンライン開催
「アフガニスタン」(1) 山本忠通・前国連アフガニスタン支援団代表

会見メモ

2016年から2020年までの約4年間、国連アフガニスタン支援団(UNAMA)代表を務めた山本忠通さんが、タリバンや国際社会の動き、今後の見通しなどについて話した。

 

司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)


会見リポート

国際社会はタリバンに機会を

出川 展恒 (企画委員 NHK解説主幹)

 イスラム主義勢力「タリバン」が実権を握り、暫定政権を発足させたアフガニスタンが、再びテロの温床とならないか、人権が守られるかどうかが世界の関心を集めている。国連事務総長の特別代表として、去年3月まで、現地で支援の指揮をとった山本忠通氏が、現状を分析し、国際社会が果たすべき役割について語った。

 山本氏によれば、タリバン内部では、政治部門と軍事部門が権力闘争を繰り広げており、政治部門は、旧政権時代の失敗を教訓に、開かれたイメージを演出して、国際社会からの承認と支援を得ようと考えている。一方、軍事部門は、厳しいイスラム教の解釈や戒律を固く守ろうとして非妥協的だが、どちらも、外からの協力や支援がなければ、統治が行き詰まることは理解している。治安面では、アルカイダの要人が入国したり、IS(イスラム国)がタリバンの不満分子をリクルートしたりしているという情報もあり、懸念は尽きない。

 食料不足と物価高騰が深刻で、9割以上の国民が十分な食事をとれておらず、飢え死にする子どもも出ている。新たな難民・避難民の発生も起きている。アフガニスタンを安定させることが地域全体の安定のため不可欠であり、国際社会は、その視点で対応を判断しなければならない。過度の要求と制裁圧力でタリバンを追い詰めるのではなく、チャンスを与える必要がある。タリバンに対し、テロ組織と縁を切るよう、女性や少数派の権利を守るよう、国内全ての勢力を包摂した政権をつくるよう、国際社会が足並みをそろえ、粘り強く働きかけてゆく必要がある。

 日本は、かつて驚異的な戦後復興を果たしたことや、常に人々に寄り添った中村哲さんの活動もあって、アフガニスタンの国民に敬意と親しみの目で見られている。それはタリバンも例外ではなく、日本は今後も国づくりに貢献できるはずだと結んだ。


ゲスト / Guest

  • 山本忠通 / Tadamichi Yamamoto

    前国連事務総長特別代表、国連アフガニスタン支援団(UNAMA)代表/同志社大学客員教授

研究テーマ:アフガニスタン

研究会回数:1

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