2021年09月09日 16:00 〜 17:30 オンライン開催
「新型コロナウイルス」(73) 在宅医療の役割 新田國夫・ 日本在宅ケアアライアンス理事長ら

会見メモ

新型コロナウイルスの感染拡大「第5波」による医療体制の逼迫を受け、在宅療養をせざるを得ない患者が急増している。

日本ケアアライアンス理事長で医師の新田國夫さん(写真左)、同副理事長で元厚生労働省医政局長の武田俊彦さん(同右から2枚目)、多摩ファミリークリニック院長の大橋博樹さん(同左から3枚目)、新宿ヒロクリニック院長の英裕雄さん(同左から2枚目)が、在宅医療の役割、いまの在宅医療の状況、課題について話した。

英さんはオンラインで登壇した。

 

司会 猪熊律子 日本記者クラブ企画委員(読売新聞)


会見リポート

第5波の現状は「自宅放棄」

上東 麻子 (毎日新聞社デジタル報道センター)

 超高齢化が進む中で起きたコロナ禍。ワクチン接種が進み、高齢者の死亡は減ったが、家族介護を頼りにできない中、地域包括ケアの重要性が高まっている。はじめに新田國夫・日本在宅ケアアライアンス理事長が背景を説明。自宅療養者が11万人を超えたことを挙げ「医療、介護、生活支援が伴って自宅療養と言えるが現状は自宅放棄。なぜこうしたことが起きたのか」と問題提起した。

 英裕雄・新宿ヒロクリニック院長は、第5波の現状を報告。急激な感染拡大で保健所が機能しなくなり、8月にクリニックは262人の患者に対応。酸素濃縮器92台を使い、97人が入院、2人が自宅療養中に亡くなった。医師会による保健所のサポートも進むが、「必要な患者は速やかに入院できることが基本。保健所と協力して入院病床の確保、救護施設でのケア、地域での見守りを進め、市民の不安を払拭した上で行動制限を解除すべきだ」と訴えた。

 大橋博樹医師は、川崎市の状況を報告。発熱外来の患者は五輪開幕後から急増し、通常診療を縮小して対応にあたる。第3波では高齢者が家族の介護のために入院できない状況にも直面した。同居家族に要介護者などがいる場合、緊急介護サービスも必要になると指摘した。

 コロナを誰が診るのか。かかりつけ医が望ましく、在宅医療を提供できる総合診療医を増やすこと、地域ごとに拠点となる診療所をつくる必要があると提言する。

 印象的なのは、「パラレルワールドからの脱却を」という言葉だ。「自宅療養で苦しむ人が大勢いて、災害レベルのことが起きている。だが、医療崩壊が叫ばれる中でパラリンピックが開幕し、外の風景は日常と変わらない。2つの世界が同時進行することで、人々は何が真実か理解しづらくなっている」

 どうしたら自分ごととして考えてもらえるか、私たちの課題でもある。


ゲスト / Guest

  • 新田國夫 / Kunio Nitta

    医療法人社団つくし会新田クリニック院長 / 日本在宅ケアアライアンス理事長 / 全国在宅療養支援診療所連絡会会長

  • 大橋博樹 / Hiroki Ohashi

    多摩ファミリークリニック院長

  • 英裕雄 / Hiroo Hanabusa

    新宿ヒロクリニック院長

  • 武田俊彦 / Toshihiko Takeda

    日本在宅ケアアライアンス副理事長 / 厚生労働省元医政局長

研究テーマ:新型コロナウイルス

研究会回数:73

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