2021年08月30日 16:00 〜 17:30 オンライン開催
「新型コロナウイルス」(72) 阿南英明・神奈川県医療危機対策統括官

会見メモ

2020年2月のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」での新型コロナウイルス集団感染への対応で得た教訓をもとに、神奈川県では独自の医療提供体制「神奈川モデル」を構築してきた。

県理事で医療危機対策統括官の阿南英明さんが登壇し、「神奈川モデル」構築の意図や、この間どのように進化してきたのか、感染症や災害時における医療のあり方などについて話した。

司会 猪熊律子 日本記者クラブ企画委員(読売新聞)


会見リポート

いずれ医療の選別が必要に

梶本 章 (朝日新聞出身)

 連日、2万人前後の感染爆発が続く。「もはや災害時」「自分の身は自分で守る行動が必要」と言われても戸惑うばかりである。そんな中「神奈川モデル」が注目されている。その推進者である同県の阿南英明・危機対策統括官は70㌻余りの資料を一気に説明した。柱は次の三つだろう。

 ①医療機関の仕分け。病院の役割分担と機能集約を目指し、重症者は人工呼吸が可能な高度医療機関、中等症者は酸素投与ができる重点医療機関で受け入れ、軽症者らは自宅や宿泊施設で療養する。この認定を受けた医療機関は県の病院の6割余りの187に及んだ。

 ②入院スコア。性別、年齢、基礎疾患など20項目のリスクごとに点数化し、5点以上は入院、それ以下は自宅等とする仕組みを導入。医師の判断はスコアより優先される。

 ③後方搬送支援と情報の見える化(IT化)。いったん入院した患者も、回復したら退院させないと新患が入れない。そこで必要期間が過ぎた人は、県の調整本部が転退院を手伝い、病床稼働率を上げる。また、同モデル下の人、モノの動きは全てITで見えるようにし、全体の効率化につなげた。

 医師でもある阿南氏は昨年、横浜港を襲ったダイヤモンド・プリンセス号のコロナ感染対応にあたり、その体験に基づき同モデルを構築した。厚労省も医療提供体制については都道府県に委ねる方向を打ち出しているが、地方には阿南氏のような人材が育っておらず足踏みしているのが実情だ。

 さて、問題はこれから。感染がさらに続けば病院のキャパを超える。それは神奈川も同じ。阿南氏は「建物は簡単に作れるが、医師と看護師はそうはいかない」と言い、「他の医療を犠牲にしてコロナ対策の充実を図るのか否かの議論が必要になる」と指摘。延期できる可能性がある入院・手術例の一覧まで準備している。厳しい選別が始まるのか。菅さん同様、私も収束を祈るばかりだ。


ゲスト / Guest

  • 阿南英明

    神奈川県医療危機対策統括官/厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード構成員

研究テーマ:新型コロナウイルス

研究会回数:72

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