2021年09月02日 15:00 〜 16:30 オンライン開催
「官僚と政治」(5) 千正康裕・株式会社千正組代表(元厚生労働省官僚)

会見メモ

『ブラック霞が関』(新潮新書、2020年)の著者、千正康裕さんは、2001年から2019年9月まで厚生労働省でキャリアとして勤務した。

千正さんが元官僚として、いまの官僚の現状や政治との関係を解説した上で、今後必要となる政策決定のあり方などについて話した。

 

司会 川上高志 日本記者クラブ企画委員(共同通信)

 

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会見リポート

「ブラック霞が関」の深層を語る

鈴木 美勝 (専門誌「外交」前編集長)

 「官僚と政治」シリーズ第5回のゲストは、異色の「過去官僚」千正康裕氏。2001年、厚生労働省に入省、その年の中央省庁再編「第一期生」だが、将来を嘱望されつつも2019年に退官。今は、医療介護福祉分野のNPO(非営利団体)と官僚をつなぐコンサルタントとして活躍する。

 氏の目には、政策マシーンたるはずの現在の官僚機構が、政治の隷下と化した「ブラック霞が関」に映る。日々の長時間労働―国会質問の答弁づくりや議員会館回りなど政治家の勉強不足を補填する〝便利屋〟に使われる「現在官僚」たち。「このままでは、国家公務員の組織が持たない、日本が壊れる」と危機感を募らせ、20代キャリア官僚の離職は「6年間で4倍増になった」とも。 

 不夜城の霞が関官庁街、その外観は今も昔も変わらないが、一皮めくれば、内実は劇的に変質。官僚主導時代には、業務の合い間に関連書物を読む時間は取れた。国会の質疑事項が出て来るのを夜な夜な待つ間も、先輩官僚と政策を巡って、来たるべき政策立案のための糧となる議論ができた。しかし、首相官邸主導の今―そんな余裕はない。

 駐インド大使館に勤務、3年ぶりに戻った霞が関の雰囲気は様変わり。安倍長期政権で歪んだ「政官」関係は首相官邸「一極」時代に移っていた。例えば、幹部人事を掌握した「内閣人事局」の発足。そして、モリカケ・スキャンダルや「桜を見る会」問題―公文書改ざんや隠蔽、官僚の政治家「忖度」報道に曝されてやり切れなかった。「偉くなってこんな国会答弁させられるのだったら嫌だな。そんなことのために俺は官僚になった訳じゃないって…」「トップを守るために防波堤役をやるっていうのは…大先輩がすごく頑張ってあのポジションまで行ってああいう仕事をするのかって気持ちにはなりましたね」

 政治家を動かせる政策官僚の時代はもう来ないのか?―氏は事もなげに言ってのけた。「官僚に自由に〝遊ぶ時間〟を与えることです」。この言葉を支えるシンプルな鉄則とは、「この社会に変えられないことなんてなにもない。少し、時間と仲間が必要なだけ」―こんな揮毫を残して席を立った。 

 


ゲスト / Guest

  • 千正康裕 / Yasuhiro Sensho

    株式会社千正組代表(元厚生労働省官僚)

研究テーマ:官僚と政治

研究会回数:5

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