2021年09月01日 15:30 〜 17:00 オンライン開催
「首都直下地震への備え」(1)首都直下地震対策における最大の問題 目黒公郎・東京大学教授

会見メモ

都市震災軽減工学、国際防災戦略を専門とする目黒公郎教授が、現在の防災対策の問題点を指摘し、とるべき考え方について話した。

 

司会 黒沢大陸 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞)

 

東京大学 目黒・沼田研究室

 


会見リポート

国難呼び込む一極集中

前田 史郎 (朝日新聞社論説委員)

 我が国は歴史上、多くの災害に見舞われてきた。その損害額をみれば、関東大震災が当時のGDPの37~44%と圧倒的に多く、阪神大震災は同2・3%、東日本大震災は同3~4%となる。これが南海トラフ地震では約4割、首都直下地震では約2割に達する見込みだ。

 「多くの人は関東大震災の時のように復興できると思うかもしれない。だが、当時は経済力を持つ主要国の支援があった。今は状況が全く異なる。国の存続が危うい国難になる」と目黒教授は警鐘をならす。

 1755年のリスボン大地震では火災や津波で約9万人が死亡、「植民地政策の先頭にいたポルトガルが一気に国力を失った」。1970年にインドなどを襲った巨大サイクロンでは、災害対応で混乱に陥った東パキスタンが独立、バングラデシュ誕生のきっかけともなった。

 効果的な防災として目黒教授が強調するのが、①敵を知る②己を知る③災害イマジネーション――の3点だ。「自然科学に基づき、ハザードに関する正確な知識をもった上で、自分の地域の特性を知れば、適切な対策が可能になる」と指摘し、公助の不足を補うカギとして「もうかる防災ビジネス」をあげた。

 「起こるかどうかわからないものに投資などできない。平時の生活を高めるのが主目的で、それが有事にも活用できる防災へ変えるべきだ」と述べ、産官学に加え、金融とマスコミの協力が必要と強調。災害マネジメント推進のため、「あるべき姿」や「実施すべき対策」を○×で評価するマトリクスを提案した。

 特に熱をこめたのは、東京一極集中の弊害だ。「明治維新の光と影」。教授はそう表現する。人材を集めて成果をあげた一方で、地方を衰退させ、今に至る。「効率がいいというが本当にそうか。時間と空間を測る長さの異なる2本の物差しで見るべきだ。人材活用の仕組みができてない」と苦言を呈した。


ゲスト / Guest

  • 目黒公郎 / MEGURO Kimiro

    東京大学大学院情報学環附属総合防災情報研究センター / professor, Tokyo University

研究テーマ:首都直下地震への備え

研究会回数:1

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