会見リポート
2021年08月10日
15:30 〜 17:00
オンライン開催
「バイデンのアメリカ」(12) 國分俊史・多摩大学大学院教授
会見メモ
※ゲストの意向により標記会見の動画は公開しません。
多摩大学大学院の國分俊史教授が登壇し、米のサプライチェーン強化戦略について話した。
國分さんは経済安全保障研究の第一人者で、同大ルール形成戦略研究所所長も務める。
著書に『エコノミック・ステイトクラフト 経済安全保障の戦い』(日本経済新聞出版、2020年5月)、共著に『技術覇権米中激突の深層』(同、2020年3月)など。
司会 小竹洋之 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)
会見リポート
米中冷戦、最低30年続く/長引かせるのが日本の道
岡 大介 (毎日新聞社経済部)
米中が対立を深める中、日本企業はどう対応するべきか。極めて今日的なテーマについて、日本で「経済安全保障」の議論に火を付けた論者が存分に語った。
冒頭、この米中「新冷戦」は、米ソ冷戦や戦前・戦中の全体主義と自由主義の対立と並び最低でも20~30年続く可能性を指摘した。また、米中対立は大統領だったトランプ氏個人の思いつきなどではなく、オバマ政権時から政府として水面下で検討が進んでおり、対立は根深いと指摘した。
つまり、企業にとっては数年間身をすくめていればやり過ごせるという類いの問題ではないということだ。
しかし、米国は中国を意識して広範な産業で情報管理を強めているのに、日本企業の対応が追いついていないのが実態だと、詳細な制度の解説とともに指摘。実際、ある企業が米国で厳格化された基準を満たしておらず、例年受注していた1000億円規模の事業を逃した事例を生々しく語った。「まだルール化されていなくても、米社会が何を懸念しているか注視して経営する必要がある」という指摘は説得力があった。
ユニークだったのが、日本が選ぶ道は「米中どちらにつくか」ではなく「平和裏に冷戦を長引かせること」だという國分氏の主張だ。「逆じゃないの?」と言いたくなるが、時間をかけることで米中対立終結後に公正なルールが残るようにする戦略だという。「今回は『経済戦争』なので、世界3位の経済大国・日本も影響力を生むという自覚が必要」と、積極的にルール形成に関与するべきだと説く。
同時に強調したのが、日本政府として経済安保戦略をきちんと打ち出すことだ。経済安保への対応はコストを伴う事が多く、経営者が株主に必要性を説明するためには政府方針が必要だという。自民党幹部のブレーンと目される國分氏の主張だけに、興味深かった。
ゲスト / Guest
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國分俊史 / Toshifumi Kokubun
多摩大学大学院教授 / 多摩大学ルール形成戦略研究所所長
研究テーマ:バイデンのアメリカ
研究会回数:12