2021年07月30日 13:00 〜 14:30 オンライン開催
「バイデンのアメリカ」(11) イラン政権交代と核合意の行方 渡部恒雄・笹川平和財団上席研究員/坂梨祥・日本エネルギー経済研究所中東研究センター副センター長

会見メモ

イランで8月初旬に反米・保守強硬派のライシ新大統領が就任するのを前に、渡部恒雄・笹川平和財団上席研究員(写真1枚目)、坂梨祥・日本エネルギー経済研究所中東研究センター副センター長が登壇。米国、イラン双方の視点からイラン核合意の行方を分析した。

 

司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)


会見リポート

イラン、核合意に背を向けず/米国、核合意再建は急がず

和田 浩明 (毎日新聞社デジタル報道センター)

 イランと米英独仏中露が2015年7月に結んだ核合意は、イランが核開発を大幅に制限する見返りに米欧が各種制裁を緩和する内容だ。トランプ前米政権による18年5月の離脱発表後、バイデン政権が21年4月、再建に向けた間接協議を始めたが中断。イランでは8月に大統領が国際協調路線のロウハニ師から反米保守強硬派のライシ師に交代し、交渉の見通しに注目が集まっている。

 イラン側の姿勢について、坂梨氏は「合意に背を向けたわけではない」と指摘。トランプ政権による制裁の最大限の強化以降マクロ経済指標が悪化する中、核合意が崩壊すれば国連安保理制裁が復活することになり「イランには合意崩壊回避のインセンティブがある」と説明した。

 一方で、バイデン政権はイランのミサイル開発や米国がテロ組織と見なす国外「抵抗勢力」支援の抑え込みも目指す。この米国の姿勢は「イランの安全保障の根幹を脅かすものであるようにイランには見える」(坂梨氏)。こうした支援は現体制の正統性の源である1979年イスラム革命の理念とも結びつく。坂梨氏は、ロウハニ前政権もこうした勢力とのつながりを維持しながら制裁解除の実現を試みており、「ライシ政権もそれを目指していくのではないか」と分析した。

 米国はどうか。渡部氏は、イランと対立するイスラエル寄りが多い米有権者などの意向もあり、イランに妥協するのは容易でなく、国内政治的にも核合意再建を急ぐ状況にないと言う。とはいえ、「現実に合わせ実利的に動く特徴もバイデン政権にはある」。現段階の優先順位は、イランが拡大中で核兵器開発につながりかねないウラン濃縮活動の制限が上で、共和党保守派などが望むミサイル開発や武装勢力支援への対応は「第2段階」との構えだと指摘。核合意はイラン側が動けば対応する準備は進めていると解説した。


ゲスト / Guest

  • 渡部恒雄 / Tsuneo Watanabe

    笹川平和財団安全保障研究グループ上席研究員 / Senior Fellow, The Sasakawa Peace Foundation

  • 坂梨祥 / Sachi Sakanashi

    日本エネルギー経済研究所中東研究センター副センター長 / Senior Research Fellow, Assistant Director, the Japanese Institute of Middle Eastern Economies (JIME), the Institute of Energy Economics, Japan (IEEJ)

研究テーマ:バイデンのアメリカ

研究会回数:11

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