2021年10月29日 13:00 〜 14:30 10階ホール
「新型コロナウイルス」(75) 高山義浩・沖縄県立中部病院医師

会見メモ

沖縄県は、県独自の強い感染拡大抑止策を続けてきたが、いまでも直近1週間の人口10万人あたり感染者数は全国最多(18日現在)で推移している。

知事に新型コロナウイルス対策を進言する県政策参与で沖縄県立中部病院の高山義浩医師が第5波を振り返り、現状の分析、今後の対策などについて話した。

 

司会 浅井文和 日本記者クラブ企画委員

 

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会見リポート

全病院の病床状況を把握・共有

山口 博弥 (読売新聞社編集委員)

 わが国の新型コロナウイルス感染拡大「第5波」は収束に向かっている。だが、冬に予想される「第6波」、あるいは将来の新規感染症に、今からしっかりと備えておかねばならない。その意味で、沖縄県立中部病院の高山義浩医師の話は、非常に示唆に富む内容であった。

 感染拡大で医療が逼迫するたびに、政府は各都道府県にコロナ病床の確保を依頼する。しかし高山氏は、「病床を増やすのは地方の病院では難しい」と明言した。では、どうするのかというと、限られた医療資源を効率的に使うしかない。

 沖縄県では、県内の全医療機関の病床運用状況や休業スタッフ数などをリアルタイムで把握・共有できるデータシステムを構築した。その上で、県の医療本部に自宅療養者の健康観察を集約させた。患者の受け入れを病院に依頼(入院調整)するのは保健所ではなく、常駐する部長級の医師。これは効果的だと思う。

 リアルタイムのデータを基に、病院の役割分担と連携、集約化を強化する点は、神奈川県と似ている。高山医師は「まさに地域医療構想そのもの。コロナ禍のせいで超早回しで実現したわけで、次の高齢化サージ(波)にも生かされる」と語った。

 また、外国人コミュニティーの感染リスクが高い点を挙げ、「感染症は社会の脆弱なところを狙ってくる」と指摘。「差別」とふたをするのではなく、きちんと分析して対策を講じる必要性を訴えた。

 冒頭、在宅医療現場での多職種連携が難しくなったことを残念がり、「アフターコロナでは現場の力を取り戻し、高齢者に寄り添って話がしたい」と語っていた高山医師。

 それだけに、最後の質疑応答で「県が入院待機ステーションを開設した時点で、また、在宅での死者が出た時点で、医療崩壊したと私は思っている」と述べた時、淡々とした口調の中に無念さが感じられた。


ゲスト / Guest

  • 高山義浩 / Yoshihiro Takayama

    沖縄県立中部病院感染症内科・地域ケア科 副部長

研究テーマ:新型コロナウイルス

研究会回数:75

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