2021年07月26日 15:30 〜 17:00 オンライン開催
「日米欧のインド太平洋での協力」鶴岡公二・元駐英大使

会見メモ

2016年から19年まで駐英大使を務めた鶴岡公二さんが登壇し、なぜいま欧州がインド太平洋への関心を強めているのか、日本は欧米とどのように協力を進めるべきかなどについて話した。

 

司会 大内佐紀 日本記者クラブ企画委員(読売新聞)


会見リポート

「異なる流れ」への危機感

川北 省吾 (共同通信社編集委員)

 中国の世界貿易機関(WTO)加盟が決まった時、世界には楽観があふれていた。国際経済システムに組み込まれ、改革・開放がさらに進めば、政治の民主化につながるとの期待が膨らんだ。

 20年後の今日、そんな高揚は消えうせた。南シナ海の軍事化。台湾への威嚇。香港では苛烈な統制が進行する。経済の自由化は民主化をもたらすとの見方は「間違いと証明された」と断じる。

 存在感を増す人口14億の大国とどう向き合うか。欧州の答えは「インド太平洋への関与強化」だった。英国、フランス、ドイツとオランダは、この地域に艦船を派遣したり、計画を進めたりしている。

 二つの背景があるという。一つは経済的理由。インド太平洋地域は人口、国内総生産(GDP)とも世界全体の6割を占める。成熟した欧州諸国が発展を続けるためには、その成長を取り込む必要がある。

 もう一つは戦略的理由だ。海洋進出を強め、東・南シナ海で活動を活発化させる中国に対抗するバイデン米政権を支え、孤立させないことが、欧州の利益になるとの「悟りと認識」があると分析した。

 底流にあるのは、民主的価値観と「異なる流れが急速に広がりつつある」との危機感。中国を否定的に見る英仏独市民は7割を超え、欧州連合(EU)の中国関連文書も「だんだん厳しくなっている」という。

 ただ、中国は多くの国にとって最大の貿易相手国でもある。EUをけん引するドイツは自動車販売の4割を依存する。中国は「歴史の中に例を見ない難しい存在」と形容し、問題はあっても敵対することはできないと指摘した。

 会見を貫く「陰の主役」は中国だった。日本はそのアクターと最前線で向き合い続けなければならない。「異なる流れ」に対する欧州の危機感は、鶴岡さん自身の胸の内でもあったに違いない。


ゲスト / Guest

  • 鶴岡公二 / Koji Tsuruoka

    元駐英大使 / former ambassador to Great Britain

研究テーマ:日米欧のインド太平洋での協力

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