2021年07月28日 11:00 〜 12:30 オンライン開催
「官僚と政治」(4) 村木厚子・元厚生労働事務次官

会見メモ

村木厚子・元厚生労働事務次官が登壇し、厚生労働省での仕事や郵便不正事件の経験から考えた公務員の仕事や組織の在り方について話した。

 

司会 福田裕昭 日本記者クラブ企画委員(テレビ東京)


会見リポート

「公務員は翻訳業」を心得に

北村 節子 (読売新聞出身)

 労働省から厚労省へ。その間、37年余で21のポストを経験。ずっと「公務員は翻訳業」と心得てきたという。「社会のニーズを制度に反映させる」という役割だ。心に残る仕事として挙げた第一は「男女雇用機会均等法」から「女性活躍推進法」までの一連の法整備。次々に事案が補足されてきた。「公務員には、短期決戦だけでなく大きなテーマを長年かけて育てる、という視点が必要」。二つ目は「障害者自立支援法」。反対の声が高く庁舎は車椅子で囲まれた。が、野党民主党の障害者問題エキスパートの議員の応援に助けられた。議員も党利党略だけではない、と痛感したという。

 三つ目は「子ども子育て関連三法」。消費増税分を子どもに振り向けようという内容だが、折しも民主から自民へ、双方が政権交代を自覚していた時期だ。民主与党にも「増税で自滅する」と反対の声が高い。

 そんな中、自民野党から呼び出された。「国会で野党質問をする運びだが、あんたには答えさせない。『二夫にまみえた』(両政権に仕えた)身だから」という。どうするか。「この案、自民の誰と話し合ってきた」と聞かれ、O議員の名を上げると「彼女に説明させよう」となった。

 また、別の会議では自民から「この案は自民発祥だ、パクったな」と責められ、「すみません、パクりました」とのやり取りを経て、「自民オリジナルなら反対はできない」という結論に運ばれた。老練な手続きである。「そういう調整のできる政治家がいた、ということです」

 そして、郵便不正事件。取り調べで疑惑を否定すると「執行猶予がつけば大した罪じゃない」と持ち掛けられ、泣いて抗議したと明かした。「検察でさえムラ社会にいると常識が分からなくなる。自戒せねば」

 40歳の時、家を買って公務員宿舎から出た。同業の夫と「納得できない局面に来たら『やめてやる!』と言える立場でいよう」と約束したんです、と笑って語った。


ゲスト / Guest

  • 村木厚子 / Atsuko MURAKI

    元厚生労働次官 / Former Vice Minister of Health, Labour and Welfare

研究テーマ:官僚と政治

研究会回数:4

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