会見リポート
2021年06月09日
16:30 〜 17:30
オンライン開催
「TOKYO2020+1」(3) 松本泰介・早稲田大学准教授・博士
会見メモ
弁護士でスポーツビジネス、スポーツガバナンスを専門とする、早稲田大学スポーツ科学学術院准教授・博士の松本泰介さんが登壇し、オリンピックの開催都市契約など開催可否に伴う法的側面について話した。
司会 森田景史 日本記者クラブ企画委員(産経新聞)
会見リポート
日本は中止できるが賠償残る/開催契約問題をレガシーに
原田 遼 (東京新聞社会部)
コロナ禍で東京五輪・パラリンピックの開催可否が話題になる中、弁護士でスポーツ法を専門とする松本泰介氏が「国際オリンピック委員会(IOC)は開催都市における本大会を中止する権利を有する」とする開催都市契約について解説した。
この契約はIOC、都と日本オリンピック委員会(JOC)の間で結ばれている。これまで日本側が中止を言い出せない根拠とされてきたが、松本氏は「大会準備をやめるということになれば、自動的に契約は破棄される。日本側が中止できないと考える必要はない」と指摘した。
一方で、その場合、IOCなどへの損害賠償は免れられないという。「新型コロナは不可抗力だが、私が手掛けた案件でも、『コロナだから中止も仕方ない』とはならない。『返金しろ』というのがスポーツの世界」と説明。総額については「数千億とまではいかないのでは」と予測した。こうしたリスクや感染状況を踏まえた上で「メリットとデメリットを比較し、トップは(開催可否を)決断するべきだ」と迫った。
契約ではIOCが中止を決めた場合、都などはIOCに対する補償や損害賠償の請求を放棄すると、明記。第三者からの請求からIOCを保護することまで求めており、「不平等だ」という批判もある。
松本氏によると、2024年パリ大会や28年ロサンゼルス大会の開催都市契約も同様という。「これまで金銭的メリットも大きく、複数都市が立候補した。IOCの力が強くなり、この条件でも招致したいという国を集めてきた」と背景を語った。
一方で、五輪は経費増大で立候補都市が減少してきた上、東京大会をきっかけに不平等とも言える契約内容が国内外に知れ渡った。松本氏は「今後、招致にあたり、いろいろな協議がされるだろう。東京大会が残した契約問題をレガシーとしてどう生かしていくか」と見据えた。
ゲスト / Guest
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松本泰介 / Taisuke Matsumoto
早稲田大学准教授・博士 / Associate Professor, Waseda University
研究テーマ:TOKYO2020+1
研究会回数:3